国際エネルギー機関(IEA)は7月7日、太陽光発電のサプライチェーンを分析した特別報告書を発行した。今後、世界中で太陽光発電の需要が急増する見通しの中、サプライチェーンが中国一国に大きく依存しているとし、サプライチェーンの多様化の必要性を伝えた。
今回の調査では、世界の太陽光発電パネルの製造能力は、過去10年間に欧州、日本、米国から、投資と技術革新で主導権を握る中国へとますます移行していることがわかった。太陽光発電パネルのすべての主要製造段階における中国のシェアは現在80%を超えており、ポリシリコンやウエハー等の主原料でも、中国の背母今後数年間で95%以上に上昇するとも予想した。
価格面では、中国政府の産業・イノベーション政策の恩恵を受けた太陽光発電の価格低減は、太陽光発電の価格を各国でも最も安価となるまでに貢献しているとも評価。しかし2021年には、原料価格の高騰とサプライチェーンのボトルネックにより、太陽光発電パネルの価格が約20%も上昇。特に、ポリシリコン市場で価格上昇は顕著で、世界各地で太陽光発電建設の納期遅延と価格上昇を引き起こしているとした。
そこで、同報告書では、太陽光発電のサプライチェーンを、原材料から最終製品まで調査し、エネルギー消費、二酸化炭素排出量、雇用、生産コスト、投資、貿易、財務実績等の分野から多角的に分析した。中国では、太陽光発電パネルの生産工場の電力は、化石燃料の火力発電で賄っていることが多いが、生産時の排出量は、太陽光発電パネルを4ヶ月から8ヶ月稼働しただでペイしてしまい、平均寿命の25年から30年稼働すれば、全体としては遥かにカーボンネガティブになると指摘した。しかし、生産地を多様化すれば、さらに大きな削減が果たせるとした。
IEAの見立てでは、2050年までにカーボンニュートラルを達成するには、2030年までに世界中の電力系統で太陽光発電の年間発電量を4倍以上に増やす必要がある。また、太陽光発電パネルの主原料であるポリシリコン、インゴット、ウェハー、セル、モジュールの世界的な生産能力は、2030年までに現在の2倍以上必要となる。
生産能力拡大と同時にレジリエントなサプライチェーンを構築していくためには、中国以外の国々でも生産能力を大幅に拡大し、サプライチェーンを多様化することが必要。IEAの見立てでは、2030年までに1,200億米ドルの投資呼び込み効果があり、太陽光発電パネル生産の雇用数も2030年までに現状の2倍の100万人にまで増えるとし、経済効果の高い分野だと魅力を伝えた。
【参照ページ】The world needs more diverse solar panel supply chains to ensure a secure transition to net zero emissions
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