EU上院の役割を果たす加盟国閣僚級のEU理事会は7月18日、欧州委員会が提案した2021年から2030年までの水産養殖のための政策ガイドラインで合意に達した。欧州委員会は2021年5月に同ガイドラインを採択しており、1年以上かけて加盟国との合意にたどり着いた。
EU域内で消費される水産物のうち約25%が養殖もの。そのうち60%が輸入品で、EU域内での養殖は少ない。欧州委員会は、養殖市場が大きく成長する中、EUの養殖は2007年以降6%しか伸長していないことから、成長産業に押し上げたい考え。
欧州委員会が定めた政策ガイドラインは、2013年に欧州委員会が採択し、EU加盟国に作成が求められている「養殖活動発展のための複数年度国家戦略計画」に関するもの。欧州グリーンディールや「Farm to Fork」戦略に基づき、EUでの養殖を有機養殖に転換させていくことが狙い。同ガイドラインでは、「レジリエンスと競争力の構築」「グリーン・トランジションへの参画」「社会的受容と顧客情報保護」「知識とイノベーションの向上」の4つを柱として掲げた。
同戦略ガイドラインは、空間と水へのアクセス、人間と動物の健康、環境パフォーマンス、気候変動、動物福祉、規制と管理の枠組み、EU水産養殖に関するコミュニケーション等、多くの分野で具体的な政策を提案。また、今後、ベストプラクティスをまとめた詳細ガイダンスを発行や、ベストプラクティス支援組織として「養殖支援機構」を創設することも盛り込んだ。
EU理事会は今回、欧州委員会のガイドラインを歓迎。環境への影響が少ない淡水域または海洋での新たな養殖方法の開発に対する支持を表明。食料安全保障にも資するとした。
同理事会はまた、特にウやカワウソ等の保護種の個体数が増加し、養殖産業の打撃となっていることにも留意。欧州委員会に対し、これらの捕食動物による被害を防止・軽減するための効果的・効率的なEU全体の管理手段を特定するよう促した。また、動物福祉と研究が重要な役割を果たす疾病管理の重要性も強調した。
加えて、有機養殖品の認証表示基準が厳しするとも指摘し、近年のベストプラクティスを踏まえた規則の改正も求めた。具体的には、持続可能な養殖品を認証・表示するEU単位での制度や、持続可能な養殖品を優遇する制度を構築することも求めた。
【参照ページ】Council approves conclusions on the new aquaculture strategic guidelines for a more sustainable, resilient and competitive aquaculture sector
【参照ページ】European Green Deal: Commission adopts strategic guidelines for sustainable and competitive EU aquaculture
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