国際環境NGOの世界資源研究所(WRI)と米メリーランド大学は6月28日、2000年から2020年までの森林破壊と森林再生活動に関する研究結果を発表した。中国やインドでは森林が純増する一方、先進国や東南アジア、中南米、アフリカでは、森林が純減していることがわかった。
今回の研究では、2016年以前の全球陸域データを唯一利用可能である米国地質調査所(USGS)と米国航空宇宙局(NASA)が共同運用している米国ランドサット人工衛星のデータを活用。同データにメリーランド大学のGLADシステムが開発した人工知能(AI)を含むアルゴリズムを適用し、経年変化の解析を実施した。
同研究は、森林の変化のダイナミクスの全体像を把握し、森林の総面積の変化を計算した。今後、樹高の把握による二酸化炭素吸収量の推定の精度向上が期待できる。
今回の発表は、2020年の世界の森林面積は2000年と比較して、2.3億haが減少、1.3億haが回復しており、結果として1億ha、2.4%の森林が減少していることがわかった。国別にみると、調査対象135カ国中36カ国では森林面積が純増していた。純増の定義は、森林がベースラインから10万ha以上増加しており、かつ増加率が1%を上回る国・
ロシア、カナダ、米国で増加した森林面積は、合計0.7億haで世界の森林面積の増加分の半分以上を占める。しかし、この3カ国において20年間で減少した面積の方が大きく、総計では純減した。
欧州大陸は森林面積が増加した唯一の大陸。アイルランド、ポーランド、デンマーク、オランダなどの欧州各国で大幅な森林面積が増加している。
アジアでは、タジキスタン、キルギスタン、バングラデシュ、インド、パキスタンなど森林面積が純増した国の割合が高い。
南米ではウルグアイが唯一増加。アフリカではスーダン、南スーダン、モロッコ、アルジェリアが増加したが、アフリカ大陸・アメリカ大陸においては減少した国が多い。
また、森林面積が純減した国であっても、国内の一部地域で森林が増加している特定の地域が存在していることが確認された。アフリカのサヘル地域においても森林増加している地域が確認できており、これまでの取り組みの効果が一定表れているとした。
一方で、生物多様性の喪失防止の観点から、再生林が増加することは、原生林の消失による影響を相殺するわけではないことを指摘している。
今後は、人工衛星では追跡が困難な森林の増加の要因についてより詳しく調査をする必要があるとした。特に、森林の復元の要因が、土地の放棄によるものなのか、植林によるものなのかを区別するため、森林の増加の要因を特定し、イニシアチブの行動と関連付けていくことは、今後の重要な研究テーマとした。
今回のデータ精度の限界として樹高が5メートル以上ないと森林として検出ができない。5メートルに達するまでに10年から15年以上が必要であるため、アフリカ31ヶ国政府が加盟する森林回復イニシアチブ「アフリカ森林景観復興イニシアチブ(AFR100)」が2015年以降に活動した成果はデータに反映されていない可能性もある。今後もモニタリングと分析を継続するとした。
また、EU理事会は6月28日、森林破壊と森林劣化に影響を与える製品の消費を制限する提案について「一般的アプローチ(General Approach)」の承認を発表した。欧州委員会は2021年11月、同法案に関する新たな個別戦略を発表していた。
【参考】【EU】欧州委、世界的な森林保全、廃棄物輸出、土壌健全で新たな戦略発表。規制強化へ(2021年11月18日)
今回の発表は、パーム油、牛肉、木材、コーヒー、カカオ、大豆の6製品を販売、輸出するすべての事業者および取引業者に対して、デューデリジェンスを義務付けるもの。皮革、チョコレート、家具など、派生製品にも適用される。
小規模な事業者は、デューデリジェンスに関する対応を大企業に依存した形で対応できる可能性も盛り込んだ。
デューデリジェンスの義務レベルは、各国に割り当てられた森林破壊の3段階のリスクレベル(低、中、高)によって異なる。高リスクな国には監視の強化を行い、低リスクな国はデューデリジェンス対応の簡素化が可能。
森林の劣化の定義は、森林被覆の構造的変化を指し、原生林の人工林化、または、他の林地への転換を意味する。また、先住民の権利に関しても言及し、人権的な側面を含めている。
【参照ページ】36 Countries Are Gaining More Trees than They’re Losing
【参照ページ】Council agrees on new rules to drive down deforestation and forest degradation globally
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