持続可能な発展を目指すグローバル企業団体WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)の不平等に対処するためのイニシアチブ「不平等に対処するためのビジネス委員会(BCTI)」は6月8日、システミックリスクとしての不平等の拡大に関するデータと、企業がアクションを起こすべき6つの主要テーマを定めた報告書を発表した。
WBCSDは2021年7月、不平等に対処するための新たなイニシアチブ「不平等に対処するためのビジネス委員会(BCTI)」を発足。同イニシアチブは、セクターを超えたマルチステークホルダーの連合体で、企業を動員して不平等に対処し、すべての人のための繁栄を生み出すことを使命としている。
【参考】【国際】WBCSD、不平等対処イニシアチブBCTI発足。若年スキル・ミスマッチではUNICEFと共同提言(2021年7月16日)
【参考】【国際】WBCSD、「職場におけるDE&I」レポート発表。成熟度モデル、課題、実践例(2022年5月5日)
世界経済は、1820年代の1.2兆米ドル(約163兆円)から、85兆米ドル(約1.1京円)に過去200年間で急激に成長。極度の貧困は大幅に減少し、ウェルビーイングの指標も改善した。その反面、最貧困層は取り残された状態が継続している。
格差の状況では、オックスファム・インターナショナルが発表しているデータにも言及し、資産では、上位10%が世界全体の75%を所有。最貧困層の50%はわずか2%しか所有していないとした。世界全体の所得に占める割合は8.5%であり、上位10%の所得者が52%を占めている。過去40年間で国内の上位10%と下位50%の平均所得の差は約2倍となり、20世紀初期の水準に逆戻りした。
不平等がもたらすシステミックリスクとしては6つを挙げた。具体的には「市民不安の増大」「社会一体性の喪失」「政府、大企業、NGO等への信頼の喪失」「政治・社会暴動の加速」「自然災害からの打撃の増大」「複雑なグローバル課題に対処するための集団能力の減衰」。いずれも企業経営や長期成長にとってマイナスに作用する。
そこで、同報告書は、不平等を解消するための重要な企業アクションで6つのテーマを特定した。
- 公平な競争条件を前提とした人権の尊重
- 教育、ヘルスケア、金融サービス、デジタルインフラ等、必要不可欠な製品・サービスへのアクセスの強化
- すべての人に雇用と経済機会を創出し、技術革新やネットゼロ経済へのトランジションとともにダイバーシティとインクルージョンを受入れ
- 株主、従業員、取引先等あらゆるステークホルダーに価値とリスクを公平に配分
- 政策や公共サービス等を通じ、不平等に関する政府アクションを促進
- 最も脆弱な人々を苦しめる気候変動や自然喪失への対策を加速
同報告書は、性別、人種、性的マイノリティの観点での格差にも警鐘を鳴らしている。「不平等に対処するためのビジネス委員会(BCTI)」は、2023年初頭に発行する報告書の中で、具体的なアクションを定義しにいく計画。
【参照ページ】The Business Commission to Tackle Inequality makes the case for business to take a stand on inequality
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