国際労働機関(ILO)は6月21日、バングラデシュでアパレル労働者向け労災補償スキーム(EIS)のパイロット版を発足したと発表した。同国での労災補償制度は今回が初。バングラデシュではラナプラザ崩落事故を発端に、国内の劣悪労働環境が大きく問題視され、今回ようやく労災補償制度確立への道筋がついた。
同制度は、労災で死亡または永久障害を負った場合、アパレル労働者と家族が補償を受けられるスキーム。1964年のILO雇用傷害保護条約に準拠する形で、ILOが設計を主導した。同制度の協議では、バングラデシュ政府が、労働雇用省と、使用者側からバングラデシュ使用者連盟(BEF)、バングラデシュ縫製・輸出業者協会(BGMEA)、バングラデシュニット製造・輸出業者協会(BKMEA)、労働者側からIndustriALL Bangladesh Council(IBC)、National Coordination Committee for Workers' Education(NCCWE)、Jatiya Sramik League(JSL)を招集し、委員会を発足。三者委員会が今回の制度の監督を務める。同制度の構築には、オランダ政府とドイツ国際協力公社(GIZ)が資金を拠出しており、両国もパイロットプログラムを承認した。
同プログラムは、今回2つの実証を予定している。まず、代表的な工場をサンプルとし、労災、疾病、リハビリテーションに関するデータ収集と能力開発を実施。労働者が負傷した場合の平均的な医療費について調査する。調査では一時的な勤務不可能となった場合に遵守されるプロセスと提供される給付金にまで及ぶ。これにより、バングラデシュにおけるEISの実行可能性、実現可能性、コスト効率を実証し、責任分担アプローチの影響を検証する。約150の工場が参加予定。
2つ目は、アパレルセクター全体で、国際労働基準に沿った永久障害または死亡の場合の補償を支払う。補償額は、ILO第121号条約に適合するよう、中央政府の基金からの一時金に上乗せする。上乗せ分の資金を、プログラム参加企業が自発的に拠出する。第1弾として、ファーストリテイリング、H&M、ベストセラー、プライマーク、KiK Textilien und Non-Food、Tchibo等7社が、自主的に資金を拠出する誓約書に署名した。
ファーストリテイリングは、2019年からILOとパートナーシップを締結。インドネシアでの公的雇用保険創設を支援し、実際に2020年11月にインドネシアで法整備が完了している。
【参考】【日本】ファストリ、アジアでの労働環境改善でILOに1.9億円拠出。インドネシアでは雇用保険創設や転職支援も(2019年9月18日)
【参照ページ】Bangladesh government launches first employment injury scheme pilot in the garment sector
【参照ページ】ILOとのパートナーシップにより、バングラデシュ初の労働災害保険プログラムを支援
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