プーチン大統領は6月30日、サハリン2液化天然ガス開発事業の強制譲渡を意図した大統領令に署名したと発表した。同事業からはすでにシェルが撤退。ロシア以外では三井物産と三菱商事が出資者となっており、日本が大きな影響を受けることとなる。
【参考】【イギリス・ロシア】シェル、ノルド・ストリーム2含むガスプロムとの事業を終了。ロシアから撤退(2022年3月1日)
サハリン2液化天然ガス開発事業は、1994年にシェル(当時ロイヤル・ダッチ・シェル)が55%、三井物産25%、三菱商事20%の三者の出資で開発事業者「サハリン・エナジー」を設立し、ロシア政府と契約し事業が開始。しかし、本格稼働を目指していた2008年の直前の2006年に、ロシア政府がサハリン2の開発中止命令を発出し、交渉で、ガスプロムの参画が決定。サハリン・エナジーの出資比率は、ガスプロムが50%+1株、シェルが27.5%-1株、三井物産が12.5%、三菱商事が10%となった。
2009年には液化天然ガス(LNG)の出荷が開始。生産能力960万tのうち日本市場向けが約6割を占め、日本全体のガス輸入のうち約9%を占める状況となっていた。
2月にシェルが事業撤退を占めた後も、日本政府は撤退しないと表明。日本勢が撤退すれば、中国やロシアに権益が渡ると主張していた。萩生田光一経済産業相は5月31日、国会答弁で、「どけと言われてもどかない」とも述べていた。しかし、米英EUが主導する経済制裁に強調した日本政府は3月、ロシアから非友好国に指定。さらに、6月に岸田文雄首相が、プーチン大統領が嫌悪する北大西洋条約機構(NATO)に与する姿勢を打ち出したことが、決定打となったと考えられる。権益が強制的に収用されれば、為す術が他にない。
【参考】【アメリカ・ロシア】ゴールドマンとJPモルガン、ロシア撤退。プーチンは国有化措置で対抗(2022年3月13日)
【参考】【国際】NATO首脳会議、戦略概念2022年決議。民主主義同盟強調。気候変動も安保リスク(2022年7月1日)
今回のロシア大統領令は、ガスプロム以外の出資者に対し、1カ月以内にロシア政府から権益承認を申請することを義務化。承認されれば、権益は維持できる。詳しい条件も明らかになっておらず、権益維持は容易ではない。
サハリン2からのガス輸入が止まれば、化石燃料に依存する日本のエネルギー供給には大きな打撃となる。資源エネルギー庁は、代替調達先を模索しているが、コストは大きく上昇する見通し。また、日本政府は長年、「石油・天然ガスの自主開発比率」を政策目標の一つとし、サハリン2も自主開発比率向上の柱となっていたが、大きく行き詰まる。
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