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【国際】G7エルマウ・サミット「再エネ転換が最も賢明な選択」と確認。ウクライナ戦争でも方針不変

 G7エルマウ・サミットは6月28日、共同コミュニケを採択し、閉幕した。今回は、民主主義のパートナーとして、アルゼンチン、インド、インドネシア、セネガル、南アフリカの首脳も一部の会合に参加した。今回の共同コミュニケでは、気候変動と生物多様性、及びエネルギーと食糧の安全保障を前面に出した。

気候変動

 気候変動では、まず、パリ協定とその実施強化に対するコミットメントを再確認し、国別目標の達成と引上げを提唱。加えて、パリ協定加盟国に対し、セクター別目標、二酸化炭素以外の温室効果ガスでの目標、さらには厳しい実施措置を採用又は強化を求めていくことでも一致した。

 陸上交通セクターでは、「2030年までに高度にカーボンニュートラル化することを約束する。この10年間に、ゼロエミッションの公共交通機関や、公共車両を含むゼロエミッションの小型車(乗用車・バン)の販売、シェア、普及を大幅に拡大することが含まれる」と表現した。議長国ドイツは、原案で、「2030年までに新車販売の少なくとも50%をゼロエミッション車両」にするという表現が入っていたが、日本政府が削除を要求。岸田首相は、サミットの直前に、トヨタ自動車を訪問しており、豊田章男社長との間で同事案についての意見交換があったと思われる。だが、結果的に2030年までにカーボンニュートラル化するという大きな目標は盛り込まれる形となった。

 海運と航空では、「遅くとも2050年までに国際航空の排出量をネットゼロにするというパリ協定に適合した世界目標を支持し、遅くとも2050年までに国際海運の排出量をネットゼロにするための世界的な努力を強化することにコミットする」と表現した。

 メタンでは、グローバル・メタン・ プレッジへのコミットメントを再確認し、2030年までに世界の人為的メタン排出を2020年比で30%以上削減するための努力を強化。ハイドロフルオロカーボン(HFC)の排出を削減することも約束した。

 また、化石燃料補助金がパリ協定の目標と矛盾することを強調し、非効率な化石燃料補助金を2025年までに撤廃するというコミットメントを再確認。さらに、生物多様性に有害な補助金を含むインセンティブを2030年までに転換又は廃止し、遅滞なく初期措置を講じることにもコミットした。

 気候変動緩和・適応のための資金動員では、民間資金の重要性を確認。パリ協定で掲げた発展途上国への1,000億ドルの資金動員目標を2025年までのできる限り早いタイミングに達成することも確認した。特に、自然を軸としたソリューション(NbS)への大幅資金増に言及し、気候変動と生物多様性のための資金シナジーを強調した。2025年までにG7の国際開発援助が自然を害することなく、人々、気候、自然のために全体としてポジティブな結果をもたらすことを確保することにもコミットした。

 国際開発金融機関(MDB)に対しては、野心的な気候変動及び生物多様性行動をさらに強化することを要求。第27回気候変動枠組条約シャルム・エル・シェイク締約国会議(COP27)までに、パリ協定に整合性のある手法を開発することや、第15回国連生物多様性条約(CBD COP15)までに生物多様性への資金動員金額を約束することも要請した。

 民間金融では、G20サステナブルファイナンス・ロードマップを支持。また、金融安定理事会(FSB)の「気候関連金融リスクへの対処のためのロードマップ」も支持。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の発足、気候関連財務情報開示の義務化を支持するとともに、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の勧告にも期待を表明した。

 ロシアのウクライナ戦争による短期影響では、G7は、エネルギー供給を確保し、異常な市場状況によるエネルギー価格の上昇を止めるために早急に行動を起こす一方で、エネルギー転換を含む気候変動や生物多様性の目標、また、ロシアの石炭や石油の輸入を段階的に廃止・禁止することを含むロシアのエネルギーへの依存から脱却するという公約は変わらないと伝えた。

 具体的には、石炭火力発電に関しては、削減努力のない(Unabated)石炭火力発電に対する新たな政府の直接支援を2021年末までに終了させたことに言及。さらに、2022年末までに同様に新たな国際的な公的支援を終了することにもコミットした。

 石油に関しては、国際的なパートナーと協議し、ロシアの海上原油および石油製品の上限価格を設定し、それを超える価格で購入された場合は、国際輸送を禁止するオプションを検定していくことで合意。但し、影響を受ける国々には緩和メカニズムも検討するとした。

 ガスに関しては、このタイミングでは、ガス部門への公的支援は、明確に定義された各国の状況に従い、気候変動目標に合致した上で、暫定措置(ロックイン効果を生じさせない方法)として実施されるならば、一時的な対応として例外的に適切となり得るとした。

 代替エネルギーとしては、削減が困難なセクターでは、低炭素・再生可能水素及びその派生品、あるいはゼロエミッション火力発電も踏まえながら、低炭素・再生可能エネルギーに基づく世界経済へ移行させる財政コミットメントを確認。さらに、再生可能エネルギーと省エネを重視したエネルギーのカーボンニュートラル化が、経済的に賢明であり、技術的に実現可能で、信頼性と安全性が高いと認識した。

 また、原子力発電に関しては、「利用を選択した国は」と前置きし、方針に違いがあることを伝えた上で、「エネルギーミックスにおける原子力の役割を再確認する」とした。また、利用を選択した国に関しては、「今後10年以内に小型モジュール炉(SMR)を含む先進的な原子力技術が開発・導入されれば、世界中のより多くの国がエネルギーミックスの一部として原子力を採用することに貢献するだろうという評価を表明した」とした。どの国が「利用を選択した国」なのかは明記していない。

生物多様性

 
 生物多様性では、2030年までに生物多様性の喪失を阻止し逆転させるという世界的なミッションの達成にコミットし、2030年までに、領土の30%以上、領海の30%以上を、国別、世界別に、保全又は保護することにあらためてコミットした。CBD COP15で採択される予定の生物多様性グローバル枠組みに基づく、野心的な目標とターゲット、実施強化、レビューと説明責任のためのメカニズム強化を提唱した。

 また、違法・無報告・無規制(IUU)漁業の撲滅、海洋環境の悪化阻止にも言及。国家管轄権外区域の生物多様性(BBNJ)の国際条約の2022年締結を目指すことでも一致した。プラスチック汚染のため、国連環境会議(UNEA)で決議された新たな国際条約の採択に向けた交渉を迅速に進めることにもコミットした。その一環として、資源効率とサーキュラーエコノミーに関するベルリン・ロードマップも支持した。特に重要な鉱物や原材料では、レジリエントでサステナブルなサプライチェーンに貢献するとした。

 農業では、2030年までに土地の劣化と森林の喪失を阻止し、逆転させることを強く決意。持続可能な農業サプライチェーンのためのG7各国の自主的及び義務的なデューデリジェンス措置に関するOECDインベントリーの作成に期待するとした。土壌の炭素隔離を強化することで、気候スチュワードシップと生物多様性の保全を改善すると同時に、農業の生産性を高め、農民、特に 零細農家の収入源を生み出すことができるという信念を共有していることも付言した。

グローバル経済・金融

 ウクライナ戦争の影響により、エネルギー及び食料の価格が高騰するインフレを懸念。特に、一部の新興国や発展途上国では過去数十年で最悪のインフレ水準にまで上がっていることを憂慮した。

 同時に、多くの発展途上国や新興国の債務状況が悪化し、非常に厳しい状況にあることを考慮し、債務問題の改善を急ぐべきと認識した。具体的には、債務処理に関するG20共通枠組みの実施を成功させると強調。中国等の非パリクラブ諸国を含む債務の持続可能性に課題を有する低所得国に対しては、多額の未払い債権を有する全ての関連債権者及び民間債権者に向け、平等性の確保原則と相互説明責任に沿った債務処理に建設的に貢献することを強く要請した。

 一方で、カーボンニュートラル及びデジタルトランジションを促進し、必要とされる大規模な投資を含む、長期的な成長に対する課題に共同で取り組むことに引き続きコミット。特に、イノベーション、生産性向上、排出削減の潜在力を引き出すために、人的資本への投資を含む民間及び公的な高水準の投資を動員することにコミットした。その際、ダイバーシティの重要性を認識し、女性と社会的弱者の完全かつ平等で有意義な参加が、経済の長期的な成功に不可欠とした。

貿易・サプライチェーン

 貿易は、グリーンかつ公正な移行(ジャスト・トランジション)と、環境財・サービス・技術・イノベーションの普及のために重要な役割を果たすと強調した。その上で、グローバルサプライチェーンにおいて、人権、環境、労働に関する国際基準の一貫した実施と遵守を最大化するために協力することで一致。環境面では、カーボンニュートラル、森林破壊や土地劣化のない農業生産、資源の持続的活用・サーキュラーエコノミー、環境影響の低減を例示。人権面では、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)、ILO多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言、OECD責任ある企業行動に関するガイドラインを遵守するとした。

 また、世界貿易機関(WTO)の運営の正常化にもコミット。加えて、WTO体制が、環境財・サービスの貿易促進、貿易関連の気候・環境対策がWTOの規則及び原則に合致しながらさらに貢献させるための議論を行うことを支持した。

雇用・ジャスト・トランジション

 労働市場でのデジタル化とカーボンニュートラル化が、労働市場の需要を変化させることを認識し、特に低所得者や構造的なハンデキャップを持つ層に焦点を当てた継続教育訓練(CET)を促進する取り組みを大幅に強化することにコミット。これにより、ディーセントで質の高い仕事を増やす。効果的な労働安全衛生(OSH)が重要とも言及した。

 また、2025年までに、政府開発援助(ODA)の雇用と技能促進プログラムのうち、特にグリーンセクターと、伝統的セクターのグリーン化に向けられる割合を増やしにいく。

 重要な労働、社会、雇用の問題に関しては、G7全体で継続性を促進し、協調行動を優先させるため、G7内に常設の雇用ワーキンググループを設置する。

健康

 今回は、足元の新型コロナウイルス・パンデミックでの安全で有効かつ品質が保証された安価なワクチン、治療薬、診断薬、その他の必須医療品への公平な世界的アクセスと提供を可能にすることにコミットしつつ、将来のパンデミックに向け、ワクチンやその他の治療薬への公平なアクセスに不可欠な規制枠組みを強化することも約束した。研究開発も強化する。

 他には、薬剤耐性(AMR)の急速の増加を懸念。人体及び動物の医療で、抗生物質を使用を慎重にするアクションを継続。さらに、人間、動物、環境の3つの健康を同時に対策する「ワン・ヘルス・アプローチ」に基づく統合的なモニタリングシステムの開発を主導することも確認した。

デジタル化

 デジタル化の在り方では、まず、「オープンで自由かつ安全なインターネット」「競争とイノベーション」を促進し、「プライバシーと個人データの保護」「人権と基本的自由の尊重」を促進する包括的かつグローバルなデジタルエコシステムの形成を支援するために協働していくとした。特に弱い立場の人 々がインターネットとデジタル技術を安全かつ確実に利用できるようにするというコミットメントを確認した。また、「インターネットの未来のための宣言」を歓迎した。

【参考】【国際】60カ国・地域、「未来のインターネットに関する宣言」発表。民主主義、基本的自由、人権(2022年5月3日)

 また、ウクライナ戦争による脅威も踏まえ、「デジタル・インフラのサイバー・レジリエンスに関する共同宣言」を支持。量子コンピューティングのような新しい破壊的イノベーションへの対応を含め、国家主体や非国家主体によるサイバー攻撃からの対策でも緊密に協力するとした。

 他方、デジタル化は、気候変動や環境保護でも重要と指摘しつつ、エネルギー消費量の増えるデジタルサービスでの省エネと環境負荷削減に対処しなければならないとした。

ジェンダー平等

 ジェンダー平等に向けたG7のコミットメントに関する進捗を継続的に監視するメカニズムを導入することで合意。様々な政策分野にわたる主要なジェンダー指標を網羅する「ジェンダー・ギャップに関するG7ダッシュボード」を作成し、定期的に年次更新されることを期待した。

 共同コミュニケには、他にも、外交・安全保障政策に関しても記述。中国の強制労働問題や一方的な現状変更の試み、ミャンマーでの人道侵害、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射、イランの核兵器開発の動き、アフガニスタンのタリバンによる政治行動、リビアやシリアでの内政不安、サヘルにおける政治・治安状況の継続的悪化等に関しても非難や懸念を伝える声明を盛り込んだ。

【参照ページ】G7 Leaders’ Communiqué

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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