金融世界大手英HSBCは3月29日、IT世界大手米IBMとの間で、金融サービスにおける量子コンピューティングシステムの活用に関して、3年間のパートナーシップを締結すると発表した。HSBCの量子コンピューティングシステムに関する専門知識を強化し、最大限技術を活用するために組織的な準備を行う。
今回のパートナーシップでは、まずHSBCは「IBM Quantum Acceleratorプログラム」に参画。これにより、127量子ビットを持つプロセッサー「Eagle」等のIBMの最新の量子コンピューティングシステムや、IBMの保有する専門知識を利用し、ユースケースの可能性を検証・進展させる。具体的には、商品価格設定やポートフォリオの最適化、カーボンニュートラル目標の達成、不正行為の特定・対処等を狙う。
IBMのInstitute for Business Valueは、レポート「The Quantum Decade」の中で、新型コロナウイルス・パンデミック後の世界では、量子コンピューティングシステムが事業課題のソリューションを劇的に変化させると予測。特に、金融業界での量子コンピューティングシステムの応用例を3つ紹介している。
1つ目は、ターゲティングと信用予測。現在、銀行口座を持たない成人が17億人おり、中小企業と合わせ、より細分化されたターゲットに対するパーソナライズ型商品が求められる。現行の事業慣行では、不正検知の既存システムでの誤検出率は約80%とされ、リスクヘッジが過度な状況。量子コンピューティングシステムにより、現在は不可能なパターン検出、分類、および予測において優位性を示すことが期待されている。
2つ目は、リスクプロファイリング。バランスの取れたリスクテイク、効果的なヘッジ取引、当局による広範なストレステストへの対応のため、量子コンピューティングシステムにより、リスクシナリオのシミュレーションを高精度かつ短時間で実行し、多くの結果をテストすることが可能になるという。
3つ目は、トレーディングの最適化。昨今、トレーディング活動の複雑化が進み、市場のボラティリティや顧客のライフイベントの変化等の制約条件を、ポートフォリオ最適化に組み込むことが難しくなってきている。期待収益を推計する際には、数多くの可能性のあるシナリオと投資の選択肢をシミュレーションし、感応性を検証できることが理想。量子コンピューティングシステムにより、複雑性とコストの双方解決することが期待されている。
【参照ページ】HSBC Working with IBM to Accelerate Quantum Computing Readiness
【参照ページ】The Quantum Decade
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