年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は4月20日、ESG投資の投資パフォーマンスを分析した研究結果を発表した。オーストラリア国立大学(ANU)クロフォード公共政策大学院の沖本竜義教授と合同研究していた。
今回の研究の論点は、ESG投資の分散投資効果を定量化と時間的な変遷の解明、ESG投資でのポートフォリオの効率性向上の状況特定、ESG投資の有効性内在する時間的な構造変化や有効性の測定、ESGスコアと企業特性・行動の関係性の定量分析、国別の差異の分析の5つ。
分析対象は、GPIFが採用している。「FTSE Blossom Japan Index(BJI)」「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数(SLI)」「MSCI日本株女性活躍指数(WIN)」「S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数(CEJI)」が主。2015年1月から2021年8月のパフォーマンスを分析した。
分散投資効果では、女性活躍指数(WIN)はTOPIXと比較して恒常的にボラティリティ・下方リスクが低かった。また、ESGセレクト・リーダーズ指数の下方リスク低下効果も近年観察できた。ESG指数と伝統的資産の残差の相関は、経年で低下傾向。日本のESG指数を組込むことによって、効率的フロンティアが広がることによるポートフォリオ効率性の改善と、最小分散ポートフォリオのリターン及びリスクが改善するとともに、最適ポートフォリオのシャープレシオが改善していることがわかった。
ESGスコアの企業価値への影響では、国連責任投資原則(PRI)署名機関数が増えるにつれ、ESGスコアが企業価値に与える正の影響が強まる傾向が確認された。ESGスコアの企業価値への影響が大きいセクターは、一般消費財、生活必需品、ヘルスケア、資本財、IT、公益事業等。また、ESGスコアが企業の超過投資を誘発している証拠も確認されなかった。
社債市場での、信用スプレッド影響では、高ESG評価は信用スプレッドを有意に低下させている。高ESG評価は、信用力が低い企業に対してより大きな信用スプレッド低下効果をもち、高ESG評価による信用スプレッド低下効果は、年々増大していることもわかった。特に、信用力が低い企業において、「人権(S)」や「ガバナンス(G)」の項目の信用スプレッド低下効果が、年々大きくなっていることもわかった。
WINに関しては、他のESG投資との比較での有効性も検証された。WINのαは、過去5か月間の株式市場のパフォーマンスが低かった翌月に高くなる傾向があるという。日本株式に対してリスクを軽減するとともに、分散投資効果を高める可能性があり、さらに、市場のパフォーマンスが悪くボラティリティが小さいときに、MSCI Japan IMIやSLIより良くなる可能性があるとした。
【参照ページ】ESG投資の分散投資効果とポートフォリオ効率性に関する共同研究
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