自動車世界大手独メルセデス・ベンツは4月11日、2030年までに二酸化炭素排出量を50%以上削減することを目指すと発表した。
今回の発表では、2030年までに乗用車1台あたりのライフサイクルにおける二酸化炭素排出量を2020年比で50%以上削減するために、具体的な戦略を示した。車両の電動化、再生可能エネルギーによる充電環境の整備、バッテリー技術の向上、生産工程でのリサイクル素材や再生可能エネルギーの活用等を重要戦略として掲げた。
また、同社は、2022年からすべての自社工場でカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)な生産を開始。太陽光発電や風力発電を全拠点に導入し、再生可能エネルギーの調達を拡大することを目指している。2030年までに、電力購入契約を含めて、エネルギー需要の70%以上を再生可能エネルギーで賄う計画だ。
車両の電動化では、2025年までに電気自動車(EV)の比率を50%まで高め、環境が整っている地域では2030年までに100%EV化することを目指す。
【参考】【ドイツ】メルセデス・ベンツ、全車種EV化。バッテリー生産も開始。巨大キャンパス建設へ(2021年3月28日)
電気自動車の充電環境では、欧州全域に約30万カ所ある充電ステーションのすべてで「グリーンチャージ」を可能にし、再生可能エネルギーから十分な量の電力が供給されるようにする。
バッテリー技術の向上では、カーボンニュートラルな電池生産に移行することで、バッテリー全体の生産に伴う二酸化炭素排出量を20%削減することが可能とのこと。正極にコバルトを利用していないリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーを量産車に利用できるよう研究も進めている。
また、全固体電池の研究も進める。電池のライフサイクルを自社で管理するため、ドイツのクッペンハイムに新しいリサイクル工場を設立し、新しい湿式錬金技術を使って使用済みEV用電池をリサイクルし、リサイクル率を96%まで高める予定。
生産工程でのリサイクル素材や再生可能エネルギーの活用では、二酸化炭素排出量が少ない鉄鋼、アルミニウムの活用を進めている。
鉄鋼では、グリーン・スチール・サプライチェーンを構築し、低炭素型もしくは脱炭素化型の鉄鋼使用を大幅に拡大していく。鉄鋼サプライヤーと密接に連携し、カーボンオフセットを活用しない形で二酸化炭素排出の削減を目指す。
2021年には、スウェーデンの新興鉄鋼H2グリーンスチール(H2GS)に自動車メーカーとして初めて資本参加。早ければ2025年までに多くの生産モデルにグリーンスチールの鉄鋼を導入することを目標としている。
【参考】【国際】メルセデス・ベンツ、調達鉄鋼のCO2削減でH2GSに出資。グリーン・スチール調達(2021年5月28日)
アルミニウムでは、サーキュラーエコノミー型のアプローチを採用することで、再生アルミニウムの使用比率を高める。欧州のスタンピング工場と鋳造工場では、国際アルミニウム・サステナビリティ認証策定NGOアルミニウム・スチュワードシップ・イニシアチブ(ASI)の認証を受けた一次アルミニウムのみを将来的に調達することにコミットした。これは、中期的には欧州以外の地域にも展開される予定。
サステナブルな素材は、すでに一部の車種で継続して利用されている。100%再生ペットボトルから作られたシート表皮材や、漁網や古いカーペットの残渣から作られたフロアカバー、埋立ゴミを再利用したケーブルダクト等を採用。2030年までに車両当たりのリサイクル材料使用率を40%までに引き上げる計画。
同社では、コバルトやリチウムなどの原材料やサプライチェーンに関わる人権課題でもアクションを進めている。リスクベースの人権保護システムの一環として、リスクの高い24種の原材料で、透明性を高め、適切な措置を講じているという。原材料を入手する鉱山から加工会社、最終的に自社の生産に至るまで、サプライチェーン全体で人権が保護される状態を目指す。
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)では、2030年には女性の上級管理職の比率を30%に高める目標を設定。現在は、8人の取締役のうち3人が女性で、37.5%に相当している。
ファイナンスでは、グリーン資産担保証券(ABS)やグリーンKPIに連動したサステナビリティ・リンク型の資金調達を拡充。また、2026年までEUタクソノミーに沿った設備投資(CAPEX)を大幅に増やす予定。
【参照ページ】Mercedes-Benz Cars aims to slash CO2 emissions by more than 50 percent by end of this decade
【参照ページ】Mercedes-Benz Group ESG Conference 2022
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