気候変動に関する金融リスクを検討するための中央銀行・金融当局ネットワーク「気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(Network for Greening the Financial System;NGFS)」は3月24日、「自然関連金融リスクに関する声明」を発表した。同時に、自然資本の金融リスクを整理した報告書「生物圏における中央銀行と監督」も公表した。
NGFSは、気候変動リスクでの金融当局の共通責務を提示してきた国際的な中央銀行・金融当局機関。国際的に自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の議論が進む中、NFGSとして生物多様性を含む自然関連の金融リスクを分析、提示した形。
NGFSは今回、生物多様性の喪失を含む自然関連リスクは、マクロ経済に重大な影響を与える可能性があり、インパクトの説明、緩和、適応の失敗は、金融安定に関連するリスクの源となるとの認識を披露した。そのため、中央銀行・金融当局は、金融安定というミッションの達成のため、自然関連金融リスクを考慮すべきとした。
NGFSは2021年4月、独立環境シンクタンクInternational Network for Sustainable Financial Policy Insights, Research, and Exchange(INSPIRE)と合同で、生物多様性と金融安定化に関する研究グループを発足。今回発表した報告書をまとめた。同研究グループには、NGFSに加盟する25機関とオブザーバー、28の研究機関から合計103人が参加。中国人民銀行の馬駿・総裁特別顧問と、グランサム気候変動・環境研究所のニック・ロビンス教授が共同議長を務めている。
【参考】【国際】NGFS、INSPIREと合同で「生物多様性と金融安定化」研究グループ発足。馬駿氏のリード(2021年4月14日)
同報告書は、中央銀行・金融当局に対し、具体的に5つの提言を行っている。
- 生物多様性の喪失を経済・金融リスクの潜在的な源泉と認識し、金融・物価の安定を維持するための対応策を策定
- 生物多様性関連金融リスクを分析・対処するための中央銀行及び金融当局の職員及び市場参加者のスキル及び能力の構築
- 金融システムが抱える生物多様性喪失リスクエクスポージャー、影響と依存性の評価、生物多様性関連シナリオ分析、ストレステスト開発等を通じて評価
- 生物多様性関連金融リスクと機会に関する金融機関のガバナンス、リスクマネジメント、戦略、開示、金融行動に対する監督上の期待事項の選択肢を準備
- 中央銀行の金融政策運営や非金融政策ポートフォリオ管理のあり方を含め、生物多様性を考慮した経済への投資を促進するために必要な金融アーキテクチャの構築支援
【参照ページ】NGFS acknowledges that nature-related risks could have significant macroeconomic and financial implications
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