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【国際】IPCC、第6次報告書のWG3報告書公表。エネルギー、不動産、輸送、農業で産業革命必要

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は4月4日、IPCC第6次評価報告書(AR6)の第3作業部会(WG3)報告書(気候変動緩和)を公表した。WG2は3月21日から4月4日まで開催されたセッションで、加盟国195カ国全てが、WG3報告書を受諾するとともに、政策決定者向け要約(SPM)も承認した。

【参考】【国際】IPCC、第6次報告書のWG1報告書公表。2040年に1.5℃上昇。2100年に2m海面上昇のリスク(2021年8月10日)
【参考】【国際】IPCC、第6次報告書のWG2報告書公表。世界30億人以上が気候変動に脆弱。生態系重要(2022年3月2日)

 気候変動の緩和に向けては、2021年11月の第26回気候変動枠組条約グラスゴー締約国会議(COP26)の直前に各国の目標の引き上げが相次いだが、その時点での国別目標(NDC)を積み上げても、2030年の見通しでは、2100年までに気温が1.5℃を超えて上昇するペースにある。そのため、国際目標となっている1.5℃目標を達成するには、2030年以降に急速に削減する必要が出てくる。

 仮に2020年末までの政策水準で2100年を迎えた場合、中央値で3.2℃上昇してしまう。1.5℃目標や2℃目標を達成するためには、2020年から遅くとも2025年までの間に、世界の二酸化炭素排出量ピークアウトさせ、2030年までに2019年比で43%削減する必要があるという。同時にメタンも2030年までに約3分の1削減する必要がある。さらにその後も急速な削減を実現しなければならない。


(出所)環境省

 特に、気候変動緩和に向けては、エネルギー部門の大きな転換が必要。化石燃料の大幅な削減、電化の普及、省エネの向上、水素等の代替燃料への転換が必要とした。技術動向では、2010年以降、太陽光発電、風力発電、バッテリーのコストが最大で85%低下していると指摘。また、政策や法律により、エネルギー効率の向上、森林破壊の割合の低減、再生可能エネルギーの導入が加速しているとした。


(出所)環境省

 一方で、既存の化石燃料インフラ及び現在計画されている化石燃料インフラが、今後その寿命までに排出すると予測される累積二酸化炭素排出量は、気温上昇を2℃に抑えるための排出余力分を使い切ってしまい、1.5℃目標に置いては全く整合性がないことも伝えた。対策としては、炭素回収・貯留(CCS)なしの化石燃料エネルギーから、CCSの完全導入もしくは再生可能エネルギーへの転換を通じて、カーボンニュートラル化もしくは超低炭素化しなければならない。それ以外にも、二酸化炭素以外の温室効果ガスの削減、二酸化炭素除去(CDR)技術の導入等も同時に行う必要がある。

 エネルギ―以外にも、工業、輸送、不動産、農業では抜本的な産業革命が必要となる。今回、2050年までの道筋も示した。素材の効率的な使用や、鉄鋼、建材、化成品等のサーキュラーエコノミー化の必要性についても言及した。


(出所)環境省

 削減コストでは、1t当たり100米ドル以下のオプションを実行しただけでも、世界全体の二酸化炭素排出量を2030年までに2019年比で50%削減できる見通しも示した。世界のGDPへの影響では、1.5℃目標を実現したとしても世界のGDPは成長できると強調。気候変動緩和で低減できる災害コストや、追加の気候変動適応コストを勘案しない場合でも、ほとんどGDPのマイナスは伴わないとした。2℃目標ではむしろ経済効果はプラスとした。


(出所)IPCC

 他方、化石燃料や関連インフラの座礁資産化リスクは、2℃目標で2015年から2050年までに1兆米ドル(約120兆円)から4兆米ドル(約480兆円)となる見通し。1.5℃目標ではさらに上回る。石炭については2030年より前に、石油とガスでは2050年に向けて座礁資産化リスクが高まっていくとした。反面、電力セクターでの世界投資需要は、2023年から2052年までで、2℃目標で年間1.7兆米ドル、1.5℃目標で年間2.3兆米ドルあり、投資ギャップを埋めるための施策が必要とした。

 同報告書には、65ヶ国から278人の執筆者が参加。他にも352人の専門家が協力した。18,000以上の論文を参照した。レビュープロセスでは59,212のコメントがあり、内容が精査された。

【参照ページ】The evidence is clear: the time for action is now. We can halve emissions by 2030.
【参照ページ】Climate Change 2022: Mitigation of Climate Change
【参照ページ】気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書第3作業部会報告書の公表について

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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