英気候変動シンクタンクInfluenceMapは3月24日、上場金融機関世界大手30社に関する包括的な気候変動評価レポートを発表した。コミットメント、目標設定、業界団体加盟状況等を分析した。
今回の評価対象は、JPモルガン、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ウェルズ・ファーゴ、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、ブラックロック、HSBC、バークレイズ、ロイズ・バンキング・グループ、BNPパリバ、ソシエテ・ジェネラル、クレディ・アグリコル、アクサ、UBS、クレディ・スイス、ING、ドイツ銀行、アリアンツ、サンタンデール銀行、トロント・ドミニオン銀行、カナダロイヤル銀行、コモンウェルス銀行、スコシア銀行、中国平安保険、イタウ・ウニバンコ、バンコ・ブラデスコ、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)、みずほフィナンシャルグループの30社。中国平安保険だけは、グラスゴー金融同盟(GFANZ)に加盟していない。
今回の調査では、同レポートは、気候政策に対して最も妨害的な25の業界団体を列挙。日本の日本経済団体連合会(経団連)も17位にランクインした。また、調査対象の金融機関30社すべてが、同業界団体に加盟していると指摘した。
特に、金融機関との関わりが深い「反・気候変動対策」業界団体として、米商工会議所、カリフォルニア商工会議所、国際民間航空機関(IATA)、米国ガス協会、日本経済団体連合会(経団連)の6団体を指摘。シティグループは、そのうち4団体に加盟しており、最もつながりが深い。JPモルガン、モルガン・スタンレーも3団体に加盟している。
(出所)InfluenceMap
2020年と2021年の2年間での化石燃料生産バリューチェーン企業に対する融資額は、少なくとも7,400億米ドル(約90兆円)。同期間の融資総額の7%に相当する。このうち1,450億米ドル(約18兆円)は、欧米の石油ガス大手5社(エクソンモービル、シェブロン、シェル、トタルエナジーズ、BP)にファイナンスされている。
また、1,450億米ドルのうち、820億米ドル(約10兆円)は、BNPパリバ、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、JPモルガン、HSBCの5社によるもの。化石燃料への融資額が最も多かったのはJPモルガンで、2年間で810億米ドル(約9.9兆円)だった。
(出所)InfluenceMap「Finance and Climate Change」
Influence Mapは、これら融資は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)が示した、2030年までに世界の排出量を半減させる必要性を明確にした科学的根拠に基づくガイドラインとは全く対照的な行動であると批判した。
金融機関における長期目標と現在の行動のギャップに対し、どう計画し、対処していくかは不透明。IPCCの1.5℃シナリオに沿って一般炭(石炭)からの撤退計画を設定しているのは7社のみ。2025年までに石油・ガスへの投資を削減することを約束しているのはバークレイズ、BNPパリバ、INGグループ、ソシエテ・ジェネラルの4社のみ。
評価対象25社中22社が機関投資家の気候変動アクション・イニシアチブClimate Action 100+(CA100+)、11社が2050年までの投融資ポートフォリオのカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)にコミットする銀行イニシアチブ「Net-Zero Banking Alliance」(NZBA)に加盟しているが、スチュワードシッププログラムのスコアが低いと指摘した。
資産運用セクターにおいても同様のギャップがある。これら金融機関の資産運用部門は、少なくとも2220億米ドル(約27兆円)の化石燃料生産バリューチェーン企業の株式を保有しており、評価対象の総資産額の5%に相当する。
加えて、インデックスに連動したパッシブ運用が主流であることによる保有株式の不整合についても問題視した。気候変動関連ポートフォリオの大部分は、IEAの「NZE2050」シナリオに沿った移行を行っていない企業の保有株式で構成され続けている。
Influence Mapは、今後の必要性とし、具体的で実行可能な短期目標とロードマップ設定を求めた。
【参照ページ】A Comprehensive Climate Assessment of the World's Largest Financial Institutions
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