米アップルの株主総会は3月4日、同社が反対を推奨していた人権関連株主提案のうち「公民権監査」「隠蔽条項リスク」の報告を、賛成多数で可決した。
今回の株主提案は、アップルの公民権方針と慣行が、同社のステークホルダーの事件に与える悪影響を分析する第三者監査を実施し、取締役会に直接提言することを義務付けるもの。さらにプロセスとして、人権団体、従業員、顧客からの意見を考慮する必要があるとした。公民権では、人権のうちジェンダーや人種に関する差別・公平に絞った表現として用いられた。
同提案では、アップルの経営陣にヒスパニック系が0、アフリカ系が1人となっており、技術系社員でも構成比が非常に少ないことを問題視。他にも、ターゲット広告が、人種差別やジェンダー差別の温床になりやすいことや、同社が新たに開発した児童性的虐待に関する技術が、法執行機関による乱用や悪用の可能性があると懸念されていることをも指摘した。
これに対し、アップルは、影響とリスクの評価、積極的なガバナンスと取締役会による監督、地域社会や主要なステークホルダーとのエンゲージメント、定期的で透明性の高い透明性レポート等を通じて、今回の提案の目的を達成していると主張。同提案が規定する広範で焦点の定まらない監査よりも効果的とも主張した。また、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)に基づきて、人権方針を策定し、社内のリスクアセスメントや外部の業界レベルの第三者監査や報告書、また、投資家、人権・労働専門家、政府、国連等の国際機関を含む関係者を通じて、顕著な人権リスクを特定していることや、人権デューデリジェンスを徹底しているとも反論していた。
また、取締役会に対し、ハラスメント、差別、その他の不法行為に関連する隠蔽条項の使用に関連し、会社の潜在的リスクを評価する公的報告書を作成するよう要請した株主提案も、同社側は反対推奨したが、僅差で可決された。
一方、人種と性別による給与格差の中央値を、関連する政策、風評、競争、業務上のリスクや、多様な人材の採用と維持に関するリスクも含めて株主に報告するよう求めた株主提案は、同社が反対を推奨したとおり、否決された。
同様に、強制労働に関し、Appleは、強制労働の重大なリスクがあるサプライヤーおよびサブサプライヤーを特定した程度、当該違反によりAppleが是正措置を講じたサプライヤーの数、影響を受けた労働者を補償するための苦情処理メカニズムの利用と活用等を取締役会に報告し、監督するよう求めた株主提案も、同社側が反対推奨したとおり、否決された。
透明性レポートの開示事項を改訂し、政府の要請や一方的な忖度を基に、表現の自由や情報アクセスを制限すると合理的に予想されるアプリストアからのアプリ削除件数やカテゴリーを取締役会に報告するよう求めた株主提案も、同社側が反対推奨したとおり、否決された。
他方、企業パーパスの関連内容を定款や細則に盛り込むよう改正することを求めた株主提案は、同社側は賛成を推奨したが、否決された。
【参照ページ】FORM 8-K
【参照ページ】Proxy Statement Pursuant to Section 14(a) of the Securities Exchange Act of 1934
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら