国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)は3月3日、銀行、保険会社、機関投資家に向け、海洋汚染と沿岸レジリエンスに関するファイナンス・ガイダンスを発行した。科学的根拠を基にアクション指針を示した。
同ガイダンスは、金融機関は、製品の全ライフサイクルにおいて廃棄物のエンド・オブ・ユース・オプションや製品の耐用年数が考慮されていない根拠がある場合や、パリ協定の移行計画に合致しない材料調達方針に関する根拠がある場合、当該案件のファイナンスを避けるべきと明記した。
玩具、ペットボトル、テクノロジー等の製品や梱包材の製造、及び廃棄物処理は、海の健全性に直接悪影響を与える可能性があると指摘。海洋プラスチック汚染だけでも、毎年3,300億米ドルの経済損失が推定されるとした。2021年の論文では、人間の胎盤にマイクロプラスチックが存在することが初めて確認され、プラスチックが出生前に人間に入り込む可能性があることにも警鐘を鳴らした。
一方、サーキュラーエコノミー分野には積極的にファイナンスすべきとした。製品の再利用、修理、使用後のリサイクルを目的とした製品設計の観点にも重点をおくよう促した。
沿岸レジリエンスでは、気候変動による海面上昇の悪影響を緩和するため、防潮堤や堤防等の沿岸インフラの必要性が高まっていることを強調。最も悲観的な気候シナリオでは、対策投資が2015年から2100年までで183億米ドル(約2.1兆円)になるとの推定値も紹介した。特に、不動産開発事業者へのファイナンスで、同ガイダンスを活用するよう促した。また、自然に基づくソリューション(NbS)として、自然の炭素吸収源としての利点もあるサンゴ礁、マングローブ、砂丘等の活用も推進。従来のインフラよりコストも最大で50%安くできると伝えた。
加えて、ソーシャルの側面でも、インフラ建設で汚染物質の漏洩防止方針がない場合に労働者が危険のさらされたり、適切な賃金が支払われていない場合があり、インフラ分野ではソーシャルにも注意を払うよう警告した。
UNEP FIは2021年2月、ブルーエコノミーと呼ばれる海洋経済分野への投融資及び保険引受に関する現状を分析したレポートを発表。同3月には、具体的な推奨アクションをまとめたレポートも発行していた。今回は第3弾。
【参考】【国際】UNEP FIのブルーファイナンス・イニシアチブ、現状レポート発表。金融機関のアクション拡大必要(2021年2月8日)
【参照ページ】DIVING DEEP: NEW GUIDANCE ON FINANCE, OCEAN POLLUTION, PLASTICS AND COASTAL RESILIENCE
【参照ページ】TURNING THE TIDE: HOW TO FINANCE A SUSTAINABLE OCEAN RECOVERY
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