気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2月28日、IPCC第6次評価報告書(AR6)の第2作業部会(WG2)報告書(影響・適応・脆弱性)を公表した。WG2は2月14日から2月27日まで開催されたセッションで、加盟国195カ国全てが、WG2報告書を受諾するとともに、政策決定者向け要約(SPM)も承認していた。
IPCC第6次評価報告書は、2013年から2014年にかけ発行された第5次評価報告書(AR5)から8年ぶりの報告書。しかしIPCCは2018年から2019年にかけ、特別報告書として、「1.5℃特別報告書(SR1.5)」「土地関係特別報告書(SRCCL)」「海洋・雪氷圏特別報告書(SROCC)」の3本を発行しており、そこからは2年から3年の間隔で最新報告書が発表された形。すでに2021年8月に第1作業部会(WG1)報告書(自然科学的根拠)が発行済み。
【参考】【国際】IPCC、第6次報告書のWG1報告書公表。2040年に1.5℃上昇。2100年に2m海面上昇のリスク(2021年8月10日)
W2報告書は、世界人口の半分以上が住む都市における気候変動の影響、リスク、適応について詳細に評価したもの。気候変動の影響は、地域毎に異なるものの、33億人から36億人が気候変動に対して非常に脆弱な状況下で生活している指摘。また生態系では、種の大部分が気候変動に対して脆弱とした。現在の持続可能ではない開発の形態によって、生態系及び人々の気候ハザードに対する曝露が増大していることにも警鐘を鳴らした。
気温上昇が、次の数十年間又はそれ以降に、一時的に1.5℃を超える場合(オーバーシュート)、1.5℃以下に留まる場合と比べて、多くの人間と自然のシステムが深刻なリスクに追加的に直面するリスクも「確信度が高い」とした。「規模及び期間に応じて、一部の影響は更なる温室効果ガスの排出を引き起こす」ことの確信度は5段階評価で真ん中の「中程度」。「一部の影響は地球温暖化が低減されたとしても不可逆的となる」確信度は上から2番めの「高い」。
前回の第5次評価報告書(AR5)以降については、「多くの部門及び地域にわたり、適応の失敗の証拠が増えている。気候変動に対する適応の失敗につながる対応は、変更が困難かつ高コストで、既存の不平等を増幅させるような、脆弱性、曝露及びリスクの固定化(ロックイン)を生じさせうる。適応の失敗は、多くの部門及びシステムに対して便益を伴う適応策を、柔軟に、部門横断的に、包摂的に、長期的に計画及び実施することによって回避できる」とも表現し、確信度は「高い」。
気候にレジリエントな開発を実現するには、「生物多様性及び生態系の保護は、気候変動がそれらにもたらす脅威や、適応と緩和におけるそれらの役割に鑑み、必須」とした。確信度は最高度の「非常に高い」。また、気候にレジリエントな開発は、「国際協力によって、そして全てのレベルの行政がコミュニティ、市民社会、教育機関、科学機関及びその他の研究機関、報道機関、投資家、並びに企業と協働することによって促進されるとともに、女性、若者、先住民、地域コミュニティ及び少数民族を含む伝統的に周縁化されている集団とパートナーシップを醸成することによって促進される」とした。確信度は「高い」。
【参照ページ】Climate change: a threat to human wellbeing and health of the planet.
【参照ページ】気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書第2作業部会報告書の公表について
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