欧州委員会の「EUサステナブルファイナンス・プラットフォーム」は2月28日、「EU社会タクソノミー」に関する最終報告書を発表した。欧州委員会は、環境分野のEUタクソノミーを最終化させているが、同時に社会タクソノミーに関しても策定作業を進めている。
【参考】【EU】欧州委、EUタクソノミー規則諮問機関の委員50人発表。欧州企業他、PRI、UNEP FI、CBI等(2020年10月4日)
【参考】【EU】欧州委、EUタクソノミーで原子力と天然ガスに厳しい条件設定。今後、異議申立期間(2022年2月3日)
EUサステナブルファイナンス・プラットフォームは2021年7月、EU社会タクソノミーに関する報告書の中間案を発表。「ディーセントワークの確保」「インクルーシブでサステナブルなコミュニティ」「アフォーダブルな住宅と医療」の3つの分野を社会タクソノミーのテーマとする答申を示していた。その後、パブリックコメントを募集していた。最終報告書の発表は当初は2021年秋を予定していたが、今回にまでずれ込んだ。
今回の答申では、具体例として、EU社会タクソノミーに含めるべき分野を例示した。
ディーセントワークの確保
- ディーセント・ワークの推進(社会対話の強化、結社の自由の促進、賃金・労働条件設定のための団体交渉の促進、労働者の給与水準が予測可能かつ透明性のある方法で設定されていることの確保、不安定な労働条件の回避、労働安全衛生、スキル・少額学習・転職・雇用創出のためのプログラム提供、年金や育児制度等の社会保障、強制労働・児童労働の撲滅)
- 職場での機会均等・差別禁止(女性の雇用機会均等加、女性のための雇用創出、経営陣と従業員の所得格差是正、農家の生活賃金確保)
- 影響を受ける労働者の人権・権利の尊重(バリューチェーンに関するリスクベースのデューデリジェンス実施)
インクルーシブでサステナブルなコミュニティ
- 健康的で安全な製品およびサービスの確保
- 耐久性があり修理可能な製品を設計し(スペアパーツを利用可能にし、スペアパーツの競合他社製品との相互運用性を確保する)、スムーズなマルチモーダル体験を可能にするサービスを提供
- サイバーセキュリティ、個人情報およびプライバシーの保護
- 消費者が十分な情報を得た上で選択できるよう関連情報の可視化や、責任あるマーケティング活動の実施。消費者の利益にならない製品やサービスへの消費者誘導を防止
- 介護サービスを含む、質の高いヘルスケア製品・サービスへのアクセスを確保(高い品質と安全性を備え、アクセスが容易であるべき)
- 特に子供のために健康的で栄養価の高い良質な食品へのアクセスを改善
- 良質な飲料水へのアクセス向上
- 良質な住宅へのアクセス改善
- 教育および生涯学習へのアクセスを改善
インクルーシブでサステナブルなコミュニティ
- 経済成長での公正とインクルージョン(基礎的なインフラへのアクセス改善、育児・子供支援、障害者支援、公正・グリーン・デジタルでのジャスト・トランジション(公正な移行)とディーセント・ワーク創出、ローカルでの雇用創出、格差是正・アファーマティブ・アクション)
- 持続可能な生活と土地の権利(コミュニティ主導の開発、事業から悪影響を受けるコミュニティへの基礎的なインフラ等への対処)
- リスクに応じた人権デューデリジェンスの実施(先住民族の権利としてFPIC(自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意)の確保を含む)
これらのテーマに対し、ネガティブインパクトの軽減、促進するための活動、テーマに関する製品・サービスそのものの3つが全て社会タクソノミーの関連分野となる。同報告書では、環境タクソノミーと同様に、セクター毎に具体的に定義することも勧告した。また、ミニマム・リクワイアメネト(最低履行基準)として、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)やOECDの各種ガイドラインを盛り込むことも勧告した。
今後のステップとしては、ミニマム・セーフガード基準の策定、社会タクソノミーに設計手法のオプション検討、大目標と小目標の優先順位に関する根拠検討、優先順位付け、各セクターでの詳細定義とDNSH基準の策定を掲げた。
【参照ページ】Platform on Sustainable Finance’s report on social taxonomy
【参照ページ】Call for feedback on the draft reports by the Platform on Sustainable Finance on a social taxonomy and on an extended taxonomy to support economic transition
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