【中国】上海、デジタルツインでの都市開発・行政モデルで世界標準狙う。2025年までに完成へ

　上海市政府は2月17日、2025年までの計画として「上海市標準化開発行動計画」を発表。中国共産党中央委員会と国務院が2021年10月に発行した「国家標準化開発要綱」に基づき、上海市での実行計画を掲げた。中国国内の他の地方政府に先駆けて開発モデルを構築し、国際的にも打ち出していく考え。

　上海市政府は、同計画の中で、「上海スタンダード」というブランドを構築することを目指している。上海市は第14次5カ年計画の中で、「グローバル資源配分機能」「科学技術イノベーションの発信地機能」「ハイエンド産業のリーダー機能」「オープンハブおよびゲートウェイとしての機能」を「四大功能」政策、また経済、金融、貿易、海運、科学技術の5分野で世界の中心となる「5個中心」政策を掲げている。さらに、半導体、生物医学、人工知能（AI）の3つの先端産業と、電子、医療、自動車、ハイエンド機器、先端素材、アパレル・消費財の6つの重点産業を産業クラスターとして発展させる「3+6産業」政策も打ち出している。

　その中でも、横断的なコンセプトとして重視しているのがデジタル化とグリーン化。上海市政府は2021年10月、「上海市都市デジタル化総合推進14次5ヵ年計画」を発表。上海市全体を5Gネットワークでカバー。公共データ4,000件種以上を2020年末までに開放するとともに、公共サービスのデジタル化も進め、多くがアプリで申請・登録ができるようになった。産業のデジタル化も、長江デルタが中国の再先端地域にまで成長してきた。

　上海市は、デジタル化のメリットとして「科学技術イノベーション」「経済発展」「市民生活での新たな体験」「新たな社会ガバナンスモデル」「新たな都市運営」の5つを強調。そして重要手法として明確にしているのが「デジタルツイン」の推進だ。都市のあらゆる要素を統合的に3次元でデジタル表現し、シミュレーション分析、推論、意思決定を行うための都市型デジタルツインプラットフォーム構築を進める目標を掲げた。

　それを軸に、都市空間、都市インフラ、モビリティ、サプライチェーン、農業、文化・観光を新たな姿に転換していく。例えば農業では、農業の空間情報基盤を整備し、デジタル農地の建設を加速。農業栽培、養魚、河川、土壌のデータも集積し、品種、地域、生産作業の全過程の大規模生産、管理、収穫、販売のデジタルモデルを構築していく。農業ロボットの普及だけでなく、農業サプライチェーン全体のデジタルツイン実証をしていくという。他にも、デジタルバリアフリー構想も進めていく。

　今回発表した「上海市標準化開発行動計画」でも、デジタルツイン型の都市開発モデルが念頭に置かれている。同時に、デジタル化した開発モデルを通じ、気候変動、大気汚染、水質汚染、土壌汚染、生物多様性、廃棄物、海洋環境を改善していくためのメカニズムも構築。これも規格化していく。再生可能エネルギー、グリーン製品、グリーン金融、グリーンサプライチェーンの標準化にも言及した。

　これらを支える人材面では、専門技術者の育成・輩出の標準化も進める。標準化人材の専門能力に対する評価とインセンティブの仕組みも改善し、スキル評価の標準化に関しても着手する。

　上海市の各当局は1月28日、世界トップの「デザイン都市」になることを合同で発表し、上海市の行政の隅々にまでデジタルツインを導入していくことをあらためて強調している。

　実際に上海市では、すでに、北京のデジタルツイン開発51Worldが2021年、上海市のデジタルツインで可視化することに成功したと発表。実際に同市の徐匯区華涇鎮では、デジタルツインでの都市開発建設計画「北楊人工知能（AI）小鎮」がすでに動き出している。

【参照ページ】上海市标准化发展行动计划
【参照ページ】上海市人民政府办公厅关于印发《上海市全面推进城市数字化转型“十四五”规划》的通知
【参照ページ】上海市经济和信息化委员会等关于印发《上海建设世界一流“设计之都”的若干意见》的通知

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