欧州委員会は2月23日、環境・人権デューデリジェンス指令(CSDDD)案を提出したと発表した。企業は、児童労働や強制労働等の人権課題、気候変動や生物多様性喪失等の環境課題に対するデューデリジェンスが義務化され、必要に応じ予防、軽減、救済が求められる。
同EU指令案は今後、欧州議会とEU理事会で審議。承認された場合、加盟国は2年以内に同指令を国内法化し、関連文書を欧州委員会に伝達する。
EU理事会は2020年12月、欧州委員会に対し、世界全体でのバリューチェーンに対応したセクター横断的な企業デューデリジェンスを含む持続可能なコーポレートガバナンスに関するEU規制の確立を要請。2021年3月には、欧州議会からも欧州委員会に対し、バリューチェーン上へのデューデリジェンス義務化に関する立法案の提出を求めていた。
今回の法案では、EU域内で活動する、非EU企業を含む大企業が対象。まずEU企業では、従業員500人以上、全世界での純売上高1.5億ユーロ(約194億円)以上を「グループ1」、従業員250人以上、全世界での純売上高4,000万ユーロ(約52億円)以上を「グループ2」と分類。まずグループ1へ同指令を適用し、それから2年後にグループ2へも適用される。
EU域内で活動する非EU企業では、グループ1、グループ2に準じた売上高がある場合には、同指令適用対象となる。中小企業は、EU企業・非EU企業ともに対象外。
デューデリジェンスでは、自社事業、子会社、二次サプライヤーを含むバリューチェーン全体が対象。以下について実施を求める。
- 企業ポリシーへの人権デューデリジェンスの組み入れ
- 人権・環境に対する顕在的または潜在的な悪影響の特定
- 潜在的な悪影響の予防・軽減
- 顕在した悪影響の撲滅・最小化
- 苦情処理メカニズムの構築と維持
- デューデリジェンス方針と対策の有効性モニタリング
- デューデリジェンス実施に関する公開
EU加盟国の当局は、同指令を監督する責任を負い、違反企業に対し、罰金を科すことが可能。環境・人権被害者には、適切なデューデリジェンス実施で回避できたはずの損害について、法的措置を取る機会が与えられる。
欧州委員会は、デューデリジェンスが企業活動の一部として機能するには、取締役が関与する必要があると指摘。企業の行動が、人権・気候変動・環境に与える影響を考慮しなければならないとし、取締役の変動報酬への気候変動対策の紐づけを推奨した。今回法案では、取締役の義務として、デューデリジェンスを導入、モニタリングし、企業戦略に統合することも求めている。
さらに大企業には、間接的に影響を受ける可能性のある中小企業を含む全企業への支援も要請。欧州委員会では、ウェブサイト、プラットフォーム、ポータルの開発、中小企業への財政支援等を行うとした。欧州委員会は、企業支援について、モデル契約条項を含むガイダンスの採択が可能。非EU企業への支援も含め、EU加盟国が提供する支援を、新たな措置で補完できるとした。
【参照ページ】Just and sustainable economy: Commission lays down rules for companies to respect human rights and environment in global value chains
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