英環境NGOのForum for the Futureは1月31日、運営している綿花(コットン)の国際イニシアチブ「Cotton 2040」の一環で、国際環境NGO世界資源研究所(WRI)とのパートナーシップを発表した。綿花サプライチェーンでのレジリエンス、再生、公正の3つの観点から在り方を提示していく。
綿花は、世界で最も重要な天然繊維の一つ。世界の繊維市場で使用される原料の約30%を占め、約3億5千万人の雇用を支えている。一方、持続可能な生産を徹底しなければ、二酸化炭素排出、水の過剰消費、農薬の過剰使用等の負の環境インパクトをもたらす。灌漑綿花栽培では、すでに水ストレスのリスクが極めて高い地域で半数以上が栽培されており、割合は2040年には3分の2にまで増加すると予想されている。
さらに、新型コロナウイルス・パンデミックでは、契約されていた400億米ドル(約4.5兆円)の注文がブランド企業によりキャンセルされ、大きな経済的ダメージも受けた。そのため、レジリエンス、再生、公正を強化したサプライチェーンが不可欠となってきている。
今回両団体は、3つの重点ポイントを示した。まず、新たな基準の策定。項目としては、リジェネラティブ農業、二酸化炭素排出と生態系、サーキュラーエコノミー、生計、小規模事業者の声の反映、サプライチェーンデータ、レジリエンス、適応・ジャストトランジション(公正)の8つ。これら全てを確保して、はじめてサステナブルと呼べるとした。
2つ目が、ビジネスモデルのイノベーション。具体的には、価値認識と共有の方法を変えるビジネスモデル、短期的利益から長期的繁栄へのインセンティブ転換、搾取的な行為に対する報酬ではなく、マイナスからプラスへのインパクト転換を促すスチュワードシップ報酬への転換等を挙げた。すでに、透明性とトレーサビリティ、サーキュラーエコノミー、消費者行動、農作業、公正な賃金と農家収入、リスクと価格変動等の分野では、一定のアクションがみられるが、さらに包括的に未対応分野を見極めていく必要があるとした。特に、インフォーマルセクターへの理解、女性の土地所有権、データ収集でのプライバシーでは、未対応が目立つ。
3つ目は、ビジネスモデル転換を通じた価値配分の変革。例えば、廃棄物や裁断くずを用いた再生型の製品生産に対しては、廃棄物そのものを完全になくするところまで徹底する必要があり、また、フェアトレードについては、リジェネラティブ農業への転換の視点が欠けていると言及した。
優先度の高い分野では、生態系サービスや炭素隔離に対する報酬メカニズム、リジェネラティブ農業への転換インセンティブ付与、トレーサビリティやデータ透明性から得られる価値創出、農家のレジリエンスリスク回避、仲介事業者の役割転換、景観アプローチの導入等が挙げられた。
Cotton 2040は、基準導入や、新たなビジネスモデル実施で、2022年にフィールド実証を行う予定。
【参照ページ】The Innovative Business Models That Can Transform Cotton Supply Chains
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