国連責任投資原則(PRI)は1月27日、投資先企業が実施する政策エンゲージメント(政治的エンゲージメント)に関する機関投資家の見解を示したレポートを発行。機関投資家が投資先企業に対し政策エンゲージメントの内容を確認すべきとする姿勢を明確にした。
政策エンゲージメントには、ロビー活動や、政治献金、パブリックコメントでの回答、幹部の人事交流(レボルビング・ドア)、マスメディアやSNSを通じた世論形成、NGOやシンクタンクへの資金提供等を含む広範な概念。業界団体等の機関を通じて間接的に行うものも含まれる。
今回のペーパーは、投資先企業が政策エンゲージメントを行うことの是非は問うていない。むしろ、政策エンゲージメントは、適切に行えば民主主義プロセスを向上させることは広く認められるとし、「責任ある政策エンゲージメント」を実施すべきとした。
但し、責任ある政策エンゲージメントの定義は簡単ではなく、参考にできる原則として、経済協力開発機構(OECD)が策定した「ロビー活動における透明性と誠実性の原則」、トランスペアレンシー・インターナショナルが発行した「Wise Counsel or Dark Arts? Principles and Guidance for Responsible Corporate Political Engagement」、国際コーポレートガバナンスネットワーク(ICGN)が発行した「Political Lobbying and Donations」、国連グローバル・コンパクト(UNGC)が発行した「責任あるロビー活動に向けて」、マルチステークホルダーで策定された「ロビー活動フレームワーク」を取り上げた。
またPRIとしては、上記の複数のガイドラインを踏まえ、5つの原則を示した。
- 現行の規制や国際的なベストプラクティスが示す精神を遵守している
- 誠実さを確保するビジネス原則と、国際条約や国の政策目標で定められたサステナビリティ目標に整合している
- 株主や多様なステークホルダーの広範利益を包含する会社の長期的な利益を維持できる
- 信頼を与え、強固なガバナンスと透明性に基づいている
- 安定した経済システムに貢献し、企業単位やシステム全体のリスクを最小限に抑え、世界のサステナビリティにプラスの効果をもたらす、十分な情報に基づいた、包括的で効果的な政策の決定につながる
また機関投資家が採るべき最初のステップとして、「政策に対する姿勢の確立」「投資先企業の責任ある政治的関与に関する社内の考え方の構築」「可能であれば、国際基準に基づき、ESG課題のスチュワードシップ活動が企業の政策エンゲージメントに与える影響を特定」「一部のセクターや企業の政策要求が、他の投資先企業の経済パフォーマンスに影響を与えることを考慮し、ポートフォリオ全体の相互依存性を特定」を挙げた。
さらに政策エンゲージメントに関する調査や投資先企業の評価を行うためのツールとして、Open Secrets、InfluenceMap、Center for Political Accountability、Access to Nutrition Index(ATNI)、Responsible Climate Change Lobbying Groupを例示した。
PRIは、2023年に、責任ある政策エンゲージメントに関する機関投資家向けのスチュワードシップ・ガイダンスを策定する余地絵。特に気候変動と人権に関する政策エンゲージメントに焦点を当てる。
【参照ページ】The investor case for responsible political engagement
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