英レベルアップ・住宅・コミュニティ省は1月10日、2017年に発生したグレンフェル・タワー火災に関連し、危険な外装材の修繕に関する費用は、不動産開発会社(デベロッパー)と外装材メーカーが負担する義務があるとの見解を発表した。2ヶ月、産業界の自発的な対応を求めるが、応じない場合は、立法により強制させるとした。
今回の施策は、日本では「ロンドン高層住宅火災事件」としても知られる事故がきっかけ。原因には様々な要因が重なったと見られているが、可燃性の外装材(クラッディング)が使用されていたことも事故原因の一つとしてみられている。使用された可燃性外装材は、当時の英国法では違法ではなかったが、他の国では禁止される等、リスク度合いの高い素材だった。素材のメーカーは、米アーコニック。
英国では、外装材の修繕に必要な費用は40億ポンド(約6,200億円)とも言われている。事故から4年の間には、中層アパートの賃借人を対象とした融資制度案等も浮上したが、今回の見解により、全額が不動産開発会社と外装材メーカーの負担義務となった。産業界には、新計画の資金調達のため、資金拠出制度に同意するよう2ヶ月間の猶予が与えられた。
同時に英政府は、産業界が従わない場合に備え、新法「建築物安全法」の制定をし、開発業者から課税することも辞さない構え。今回専門のチームも発足した。また、リスクの高い高層ビルには、政府から51億ポンドの資金を拠出する。混乱している不動産鑑定市場においても、鑑定者に法的な過失責任がないことを明確にした。現状では、事故後、高層ビルに対しては、鑑定結果が非常に悪い事態となり、不動産市場そのものが大混乱に陥っている。そのため、売却することもできない状態。
また修繕等を理由に立ち退き等から借地人を保護する方針も明確にした。安全上の欠陥に対し開発事業者に遡及して補償を求められる権利の年限も現行の15年から30年に引き上げる考え。
英政府は2021年7月にもガイダンスを発表していたが、開発事業者の間で、建物の高さに関係なくクラッディングの修繕を要求されるとの不安が高まっていた。今回、同省は、中低層の建物に対しては、生命リスクがないことを説明できれば、修繕義務は課さず、スプリンクラーや警報機等の対策でよいとする政策をあらためて示した。
【参照ページ】Government sets out new plan to protect leaseholders and make industry pay for the cladding crisis
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