イタリア工科大学(IIT)のバーバラ・マッツォラーリ教授率いる研究グループは11月18日、生分解性のある可溶性マジックテープを世界で初めて開発することに成功した。論文が国際学術誌「Communications Materials」に掲載された。
今回開発したマジックテープは、「キャッチウィード」と呼ばれる植物(Galium aparine)の葉のマイクロフック構造から着想。今後、需要が拡大するとみられている自然環境の監視・保護や、プレシジョン農業(精密農業)向けの装置で使用することを想定している。具体的には、植物の葉に取り付けることで、一時的な絆創膏のような役割を果たし、植物の血管系に有益な物質を放出したり、作物の健康状態に関する情報をワイヤレスで伝えるインテリジェントクリップとして機能する。
今回研究者らは、キャッチウィードが持つ天然のマイクロフックの特徴を人工的に再現するため、構造を形態学的および生体力学的な観点から研究。素材開発では、高解像度の3Dプリンターを用いて、さまざまな高耐性材料を採用した。例えば、感光性材料やイソマルト(砂糖のような物質)から作られた生分解性材料等、相対的な用途に合わせて特性を変えることができるようにもした。
最初の応用例としては、植物のキューティクルをほとんど侵さずに貫通し、植物のモニタリングや治療ができるよう設計。イソマルトを原料としたマイクロフックでは、植物に取り付けることで、葉の血管系に接続され、可用性のイソマルトは内部に溶解できる。このマイクロフックを絆創膏として利用することで、有益な物質や医薬品、農薬、殺菌剤などを局所的に葉に放出することができる。さらに、一度塗布した石膏は溶解するため、廃棄物を出さない。
感光性樹脂で印刷されたフックでは、光、温度、湿度用の電子機器やセンサーと一緒にシステムとして組み立てることで、葉の両面から植物をワイヤレスでモニターできるインテリジェントクリップを生産することに成功した。他の素材では、マイクロステップを使って葉の表面を移動するマイクロロボットシステムも開発した。
【参照ページ】The first biodegradable version of Velcro has been created to safeguard the environment
【画像】IIT
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