欧州委員会は12月22日、租税回避目的のシェルカンパニー(ペーパーカンパニー)活用を防止するための新たなEU指令案を発表した。EU域内で経済活動を行っていない、あるいは最小限の活動しか行っていないシェルカンパニーが、いかなる税制上の優遇措置も受けられないようにする。
今回発表の新ルール案では、シェルカンパニーの活用に関する透明性基準を設け、税務当局がシェルカンパニーの濫用を容易に発見できるようにする。指標としては、利益、従業員、施設に関する客観的なものを想定し、各国の税務当局が租税回避目的のシェルカンパニー事業体を発見しやすくする。
仕組みとしては、特別な報告を課す企業の反転のために、3つの観点を用意。まず、売上基準。過去2年間の会計年度における事業体の全売上の75%以上が事業体の事業活動に由来しない場合、または、資産の75%以上が不動産物件やその他の特に価値の高い私有財産である場合に、該当する。
次に、企業が売上の大部分を他の法域に関連する取引を通じて受け取るか、またはその関連収入を海外にある他の企業に渡している場合。
3つ目は、企業の経営管理サービスが外部委託されている場合。
これら3つの基準を全て満たす企業は、税務申告書に、会社の場所、銀行口座、役員や従業員の税務上の居住地等に関する情報を報告することを義務化。すべての申告書には、裏付けとなる証拠を添付する必要もある。提出された情報を基に、当局がシェルカンパニーか否かを最終判断する。
シェルカンパニーに指定された企業は、税の軽減措置や、租税条約上の恩恵を受けることができなくなる。また、親子会社指令と利息・ロイヤルティ指令に基づく措置も受けられなくなる。さらに、シェルカンパニーから第三国への支払いは、シェルカンパニーを経由したものとは扱わず、シェルカンパニーへ支払った法人のレベルで源泉税を課す。受けたっと収入に関しては、シェルカンパニーの株主の国で課税される。
同EU指令は、EU加盟国が採択すれば、2024年1月1日に発効する。
また欧州委員会は同日、経済協力開発機構(OECD)とG20財相・中央銀行総裁会議で採択された最低法人税率導入に関するEU指令案も発表している。
【参考】【国際】G20財相・中銀総裁会議、デジタル課税や最低法人税率、サステナブルファイナンスで最終合意(2021年10月15日)
【参照ページ】Fair Taxation: Commission proposes to end the misuse of shell entities for tax purposes within the EU
【参照ページ】Fair Taxation: Commission proposes swift transposition of the international agreement on minimum taxation of multinationals
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