欧州委員会は12月15日、環境犯罪に対する刑法上の取り締まりを強化する新たなEU指令案を採択した。違法な木材取引、違法な船舶リサイクル、違法な取水等を新たにEU環境犯罪と規定し、違反者には罰則を課す。今後、欧州議会とEU理事会での審議に入る。
EUでは、2008年に環境犯罪指令(刑法による環境保護に関する指令2008/99/EC)を制定していたが、欧州委員会が2020年に発表したレビュー文書によると、環境犯罪での立件は少なく、現状の刑罰措置は抑止力として不十分と判断。国境を越えた協力も弱いことが問題視されていた。
欧州委員会は今回、環境犯罪に対する刑罰に関し、EU加盟国での一定の共通ルールを整備することを提案。環境犯罪が死傷を引き起こした場合、もしくは引き起こす可能性がある場合、10年以下の懲役刑を設定。自然回復義務、公的資金や公共調達からの排除、行政許可の取消等の追加的な行政処分も提案している。
欧州委員会の狙いは、環境犯罪を刑罰として明確化することで、警察、検察官、裁判官等の司法組織を動員でき、抑止や執行だけでなく、データ収集や統計の面でも整備が進むことを期待している。国際的な捜査や訴追も促進される。
同EU指令案を受け、欧州委員会は12月16日、生象牙に関しては修理のみを唯一の例外とし、それ以外のEU域内での商業取引を全面的に禁止する改正EUガイダンスを発表した。EUの「2030年生物多様性戦略」に基づき、EUにおける象牙のほとんどの取引を効果的に禁止する措置を講じた。
欧州委員会は2017年にガイダンスの初版を発行し、生の象牙の再輸出を禁止。EU加盟国に対し、潜在的な取引事業者からの申請に対しては精査を徹底するよう助言している。今回の規制強化案では、加工象牙に関しても、1975年以降の製品の輸出入とEU域内商業取引を原則禁止。楽器や、博物館に販売する工芸品のみ例外的に許可されるが、当局の証明書発行が必要。狩猟での個人的な記念品(トロフィー)のEU域内への持込は可。
EUでは各加盟国単位でも、EUレベルより厳しい規制を施行している国もある。
【参照ページ】European Green Deal: Commission proposes to strengthen the protection of the environment through criminal law
【参照ページ】Ivory trade: Commission updates rules to end most forms of ivory trade in the EU
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