米国で、ガスエネルギーへの逆風が吹き始めている。米ペンシルバニア州では、Robinson Powerが、設備容量1GWで建設予定だったペンシルバニア州ブナホローでのガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電所の建設許認可を取り下げた。理由は経済状況の変化。他にもカリフォルニア州では、自治体がガス使用を規制する動きも出ている。
米国の東海岸中部13州及びワシントン・コロンビア特別自治区の電力ネットワーク地区「PJM相互接続地区」では、すでに3つのガス火力発電所が中止となり、他の14のプロジェクトについても将来性が疑問視され始めているという。
IEEFAによると、背景には「地区の電力需要が横ばい」「電力価格が10年以上にわたって下落傾向」「蓄電設備や洋上風力発電等の再生可能エネルギーの大幅増」が見込まれているためという。さらに、金融市場で化石燃料への投資が忌避され始めていることも影響している模様。PJM相互接続地区でのガス火力発電は過去10年で2倍近くに増えたが、風向きが急速に変わってきている。
PJM相互接続地区には、6,500万人の人口を抱えるが、電力供給に向け、設備容量に応じた金額が支払われる容量オークションを毎年実施している。そのため容量を増やすためのガス火力発電の建設ラッシュが起きていたが、前回のオークションでは、太陽光発電で1.5GW、風力発電で1.7GWが落札。さらに数千MWの洋上風力発電が2030年までに大きく増える見込みで、ガス火力発電でオークション落札が厳しくなってきている。
さらに、全米では地方政府からのガス規制強化の動きも顕著になってきている。新築物件でのガス使用を禁止する動きでは、カリフォルニア州では50自治体を突破。オレゴン州内の自治体でも条例が制定された。民主党が強い東海岸と西海岸では、建物のエネルギーの全面電化の動きが出てきており、これをバイデン政権の連邦政府が後押ししている構図。米エネルギー省は11月1日、ガスに代わる寒冷地用ヒートポンプの市場開拓プログラムで、6社を採択。現在、連邦議会で審議中の「Build Back Better」法案が可決すると、さらに多くの予算が投入される。
一方で、共和党の強い州では、州内の自治体がガス使用を禁止する条例を制定することを禁止する動きに出ており、2021年中に全米で20州を超える見通し。ガスを巡る共和党と民主党の戦いが強まっている。
【参照ページ】Rapidly Changing Investment Climate Challenges Planned PJM Gas Plants
【参照ページ】Gas Ban Monitor: Calif. count reaches 50 as West Coast movement grows
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