米証券取引委員会(SEC)は11月3日、株主提案や議決権行使に関し新たな法律意見(Staff Legal Bulletin)を通知した。米トランプ政権時代の指針に代わる新たなガイダンスとなる。特にマイクロマネジメントの判断基準が大きく変更された。
【参考】【アメリカ】証券取引委員会SEC、気候変動対応株主提案をマイクロマネジメントとし除外できるとの見解発表(2018年10月31日)
Staff Legal Bulletinは、法令ではないが、SECとしての法律解釈を示したもの。特に、上場企業への株主提案に関しては、企業の取締役側がルール違反と判断した場合にSECに拒否申請を行い、SECが承認すれば株主提案から除外できるというルールがあり、SECの見解は株主総会運営を大きく左右するものとなる。
今回の論点は、株主提案の拒否では、1934年証券取引法は「日常業務(Ordinary Business)」は除外できるとしている点。トランプ政権時代には、「内容の質」と「内容の程度」の2つの基準を満たす場合に除外できるとし、内容の程度では「詳細内容への関与」「特定の時間軸(Time-frames)の要求」「複雑な案件の実行手段」にまで踏み込むものは「マイクロマネジメント」と認定され、株主提案を拒否できるとしていた。特に、気候変動株主提案に関しては、気候変動対策に関するマイクロマネジメントとし、株主提案を拒否する動きが出てきていた。
それに対し今回の見解では、マイクロマネジメントの判定に慎重になると言及した。具体的には、詳細なアクションを求める提案や、時間軸や手法を促進する提案は、それ自体がマイクロマネジメントに該当しないと表明。提案で求められている粒度のレベルと、それが取締役会や経営陣の裁量を不適切に制限しているかどうかを判断基準にするとした。
さらに、日常業務除外ルールに関し、重要な社会政策上の課題を提起する場合は除外できないとした1976年判定の解釈を再整理した。従来の見解では、社会政策上の課題が、直接的に当該企業にとって重要ではないと判断された場合は、株主提案を拒否できるとしていたのに対し、今回の新ルールでは、会社毎の関係性判断は重要ではなく、社会的に重要な政策課題とみなさる場合には拒否できないとした。
他にも、「直近の会計年度末の会社の総資産の5%未満、直近の会計年度の純利益と総売上の5%未満を占める業務に関連し、その他に会社の事業に大きく関連していない」株主提案を拒否できるとしてきた解釈についても、会社の事業に関連する広範な社会的または倫理的関心事を提起する提案は、関連する事業が経済的閾値を下回っていても除外されない可能性があるとの見解を示した。
「株主提案は、付随する支持声明を含めて500語を超えてはならない」との規則についても、グラフや画像等のグラフィックを含めることは可能で、当該文字制限にも含まれないとの見解も示した。
【参照ページ】Shareholder Proposals: Staff Legal Bulletin No. 14L (CF)
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