英ビジネス・エネルギー・産業戦略省は11月3日、第26回国連気候変動枠組条約グラスゴー締約国会議(COP26)議長国として、すでに190の国や組織が炭素回収・貯留(CCS)設備の導入されていない石炭火力発電の段階的廃止に合意したと発表した。英国は、引き続き、合意の国や組織を増やしていく。
今回の発表では、まず、英政府とカナダ政府が2017年に発足した国際イニシアチブ「Powering Past Coal Alliance(PPCA)」に新たに28ヶ国が加盟したことを表明した。現在の加盟国は48ヶ国となり、他にも自治体が48、企業等の組織が69加盟している。加盟国は、欧州を中心に、メキシコ、チリ、ペルー、イスラエル、シンガポール、アゼルバイジャン、セネガル等。自治体では、アジアからも京都市、韓国のソウル市、京畿道、江原道、全羅南道、忠清南道、仁川市、大邱市、台湾の新北市、台中市、高雄市が加盟している。
【参考】【国際】世界の国・州25政府、CCS無し石炭火力発電の早期全廃で同盟結成。英国・カナダが主導(2017年11月27日)
他にも、英政府が主導した新たな「Global Coal to Clean Power Transition Statement」等を通じ、インドネシア、ベトナム、ポーランド、韓国、エジプト、スペイン、ネパール、シンガポール、チリ、ウクライナ等23カ国以上が、CCS設備のない石炭火力発電の段階的廃止や新規建設、及び投資を行わないことを約束したことも明らかにした。
さらに、イタリア、カナダ、米国、デンマーク等25カ国も、英国が主導した共同声明に署名し、2022年末までに、CCS設備のない化石燃料エネルギー部門への海外支援を終了し、クリーンエネルギーへの移行への支援を優先することを約束。これにより、年間178億米ドル(約2兆円)の化石燃料への公的支援が打ち切られることになるという。エチオピア、フィジー、マーシャル諸島等の発展途上国も支持を表明した模様。中国、日本、韓国が最近、海外への石炭火力発電ファイナンスを終了させたとも言及した。但し、実際には、日本政府は、海外の「削減努力のない(Unabated)」の石炭火力発電ファイナンスのみを終了するとしており、CCUS設備だけでなく、水素やアンモニアの混焼も支援対象として継続する政策を打ち出している。
別途、英国政府は、気候投資基金(CIF)に新たに2億ポンドを拠出し「石炭トランジション加速(ACT)」プログラムを始動。インド、インドネシア、フィリピン、南アフリカの4ヶ国が最初の支援対象国に選ばれたと表明した。CIFには、米国、英国、ドイツ、カナダが6月のG7サミットの中で総額20億米ドルの資金拠出を表明しており、ACTの他に、再生可能エネルギー統合(REI)プログラムも開始。REIには、ウクライナ、フィジー、コロンビア、ケニア、マリが支援対象国に選ばれた。さらに、インドネシアとフィリピンは、アジア開発銀行(ADB)が進める石炭火力発電の早期廃炉プログラムにも参加する意向まで示したという。
英政府は今回、COP26で、石炭火力発電の廃止を全面に掲げており、今回の声明も、COP26での動きをさらに加速させるための交渉の一環とみられる。今回の発表でも「歴史的な一歩」「COP議長国がこの問題を優先し、国際的な化石燃料ファイナンスに大胆な終止符を打ったのは初めて」とまで表現し、賛同しない国への揺さぶりをかけている。
英政府は、パリ協定の批准の対象に、法的には英国から自立しているマン島とチャンネル諸島の2つの英国王室属領にも拡大する意向も示した。
【参照ページ】END OF COAL IN SIGHT AT COP26
【参照ページ】End of coal in sight as UK secures ambitious commitments at COP26 summit
【参照ページ】PPCA
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