米ジョー・バイデン大統領、EUフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長、英ボリス・ジョンソン首相は11月2日、第26回国連気候変動枠組条約グラスゴー締約国会議(COP26)の場で、国連持続可能な開発目標(SDGs)とパリ協定の観点から、持続可能なインフラ開発に関し、5つの主要原則で合意した。
今回の会合は、岸田文雄首相、カナダのトルドー首相、インドのモディ首相、コロンビアのドゥケ大統領、エクアドルのラッソ大統領、ナイジェリアのブハリ大統領、バルバドスのモトリー首相、コンゴ民主共和国のツシセケディ大統領との会談の中で打ち出された。6月にG7サミットで合意した内容を踏まえたものとなっている。
【参考】【国際】G7コーンウォール・サミット2021、共同声明採択。パンデミック、気候変動、生物多様性等で合意(2021年6月14日)
今回発表した5原則は、
- 気候レジリエントで、気候変動の観点を踏まえたインフラの開発
- 発展途上国と先進国の間での協力でインクルーシブな連携と、民間セクターが不可欠
- 高い基準に適合するインフラの資金調達、建設、開発、運用、維持
- 1.5℃目標の実現に向け2050年カーボンニュートラル達成のためには、数兆米ドルの動員が不可欠
- 経済回復と持続的な雇用創出を促進する上での重要な役割
今回、バイデン大統領、ライエン欧州委員会委員長、ジョンソン首相は、世界各国に対し、同様のコミットメントを行うよう呼びかけた。
また、米国、英国、EU、ドイツ、フランス、南アフリカは同日、南アフリカのカーボンニュートラル化を支援するため、新たに長期的な「ジャスト・エネルギー・トランジション・パートナーシップ」を発足。第1弾で85億米ドルの支援を南アフリカに提供し、特に発電を中心にトランジションを進める発表した。支援には、助成金、譲許的融資および投資、民間ファイナンスを含む。このパートナーシップの主眼は、南アフリカの脱石炭火力発電を進めることにある。これにより今後20年間で最大1Gtから1.5Gtの排出量を防ぐ。
さらに、英ジョンソン首相とインドのモディ首相も同日、再生可能エネルギーの普及・拡大に向けた国際的な送電網整備を進めるイニシアチブ「グリーン・グリッド・イニシアチブ-One Sun One World One Grid(GGI-OSOWOG)」を正式に発足した。同イニシアチブは、5月に英印首脳会談で構想がまとまっていた。今後、政府や企業を含むエネルギーグリッド関係者の世界的な連合体を結集し、地域や大陸を越えたエネルギーグリッドの拡大を加速。これにより、全世界で再生可能エネルギーによる電力供給を行うためのインフラを整備しにいく。
【参考】【イギリス・インド】首脳会談開催。英印FTAに向け貿易額倍増で合意。気候変動・コロナ対策でも(2021年5月9日)
一方、ライエン欧州委員会委員長、欧州投資銀行(EIB)のホイヤー総裁、ブレイクスルー・エナジーの創業者であるビル・ゲイツ氏の3者も同日、「クリーン水素」「持続可能な航空燃料(SAF)」「大気直接回収(DAC)」「長時間のエネルギー貯蔵」の4分野での投資を加速するパートナーシップも締結した。2022年から2026年の間に最大8億2,000万ユーロ(約1,100億円)を動員。投資対効果3倍を見込んでいる。
さらにライエン欧州委員会委員長は、「グローバル・フォレスト・ファイナンス・プレッジ」に対する欧州連合(EU)の拠出金として、今後5年間で10億ユーロ(約1,300億円)を発表した。他にも、米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、オランダ、ベルギー、ノルウェー、デンマーク、日本、韓国も、「グローバル・フォレスト・ファイナンス・プレッジ」に参加し、総額120億米ドル(約1.4兆円)の拠出金が集まった。
その中で、岸田文雄首相は同日、COP26の会場でスピーチを実施。日本政府は今後5年間で、アジア諸国を中心に、最大100億米ドル(約1.1兆円)の支援を行うと表明。アジア開発銀行(ADB)等と協力し、アジアのカーボンニュートラル化に向けた革新的な資金協力枠組みを立ち上げるとした。日本政府は6月には、今後5年間で官民で600億米ドル規模の支援を打ち出していたが、今回の発表はそれに追加する形となる。
さらに、岸田首相は、防災等の気候変動適応への支援額を倍増し、約148億米ドルの支援を行うと表明。また、先端技術を活用し、国際機関と連携しながら、世界の森林保全のため、約2.4億米ドルの資金支援も打ち出した。
一方、エネルギー政策では、日本政府が主導する「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ」を通じ、アジア諸国の化石燃料の火力発電をアンモニアや水素の混焼や専焼に転換するため、1億米ドル規模の先導的な事業を展開すると発表した。しかし、この発言が、石炭火力発電の継続示すものと受け止められ、岸田首相は同日、環境NGOでつくる「気候行動ネットワーク」(CAN)から、不名誉な「化石賞」を2位受賞した。同日の化石賞では、1位がノルウェー、3位がオーストラリアだった。
【参照ページ】U.S. President Biden, European Commission President von der Leyen and UK Prime minister Johnson announce Commitment to addressing climate crisis through infrastructure development
【参照ページ】France, Germany, UK, US and EU launch ground-breaking International Just Energy Transition Partnership with South Africa
【参照ページ】UK and India launch new grids initiative to deliver clean power to the world
【参照ページ】Commission, Breakthrough Energy Catalyst and European Investment Bank advance partnership in climate technologies
【参照ページ】THE GLOBAL FOREST FINANCE PLEDGE
【参照ページ】COP26世界リーダーズ・サミット 岸田総理スピーチ
【参照ページ】FOSSIL OF THE DAY 1 NOVEMBER 2021
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