中国共産党中央委員会と国務院は10月24日、カーボンニュートラルの実現に向けた意見を表明した。日付は9月22日付だが、新華社通信が10月24日に掲載した。中国政府は、2060年カーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)、2030年の原単位排出量を2005年比65%削減を目標として掲げており、今回中央政府の大方針を示した形。
同発表では、2025年、2030年、2060年の3段階で到達ゴールを掲げた。まず、2025年までに、経済システムの最初の転換を行い、主要産業の省エネを大幅に達成。GDPを分母とした原単位エネルギー消費量は、2020年比で13.5%減、原単位二酸化炭素排出は同18%減を実現。エネルギー消費量に占める非化石燃料の割合は約20%、森林カバー率は24.1%、森林蓄積量は180億m3とした。
2030年までには、省エネ水準で世界をリードするまでに牽引。GDPを分母とした原単位二酸化炭素排出量は2005年比で65%以上を目指す。エネルギー消費量に占める非化石燃料の割合は約25%とし、風力発電と太陽光発電の総設備容量を1,200GW以上にまで増やす。森林カバー率は25%、森林蓄積量は190億m3とした。これ以降は、二酸化炭素排出量の総量も削減に向かう。
2060年までには、経済システムの転換を完了。エネルギー消費量に占める非化石燃料の割合が80%以上となり、カーボンニュートラルを達成する。
今回の発表では、「国家協調、節約第一、二輪駆動、内外アクセス、リスク防止」の5つを重要原則として掲げた。特に、二輪駆動では、政府と市場の双方を主軸とし、新しいタイプの国家体制を構築。科学技術と市場制度のイノベーションを重視する姿勢を強調した。また内外アクセスでは、海外の技術を積極的に採り入れる考えも示した。
産業では、エネルギー、鉄鋼、非鉄金属、石油化学、建材・建設、運輸・交通でのカーボンニュートラルが重要と説明。 鉄・鉄鋼や石炭の生産能力の削減・集約にも言及した。また生産でのプロセス・イノベーションとデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速も盛り込んだ。農業では、炭素固定と効率化を軸に据えた。
特にエネルギー関連では、高エネルギー消費と高排出プロジェクトの「両高」の開発を「断固として抑制」と言及。鉄鋼、セメント、板ガラス、アルミニウム等の「両高」プロジェクトの新規建設・拡張は、純増ではなくリプレースを原則とする。石炭火力発電、石油化学、石炭化学産業には生産能力管理政策が導入される。とりわけ、石油精製、エチレン、パラキシレン、石炭からオレフィン生産の新規・拡張プロジェクトは、国家産業計画に盛り込まれない限り禁止される。
石炭の消費に関しては、2021年から2025年の第14次5カ年計画期間では石炭消費量の増加を厳しく抑制し、2026年から2030年の第15次5カ年計画期間では徐々に削減する。また、石油消費も、第15次5カ年計画期間に増加ではなく横ばいにまで持っていく。一方、ガスに関しては、シェールガス、炭層メタン、タイトオイル・ガス等の大規模開発を加速させるとした。2060年までの序盤では、石炭・石油からガスへの転換がメインとなる見込み。但し、全体計画にあるように、再生可能エネルギーと原子力発電の積極開発も強力に進める。「核融合」にも言及した。電力市場改革にも踏み込む。
交通・輸送では、鉄道、高速バス、海運を強化する。自動車と船舶では、新エネルギーへの転換、入港中の船舶の陸上電源使用の常態化も促進する。
一方、成長戦略としては、次世代IT、バイオ、新エネルギー、新素材、ハイエンド機器、新エネルギー自動車、環境保全、航空宇宙や船舶等の戦略的新興産業の開発を加速する。DXでは、グリーンマニュファクチャリングシステムの構築、インターネット、ビッグデータ、AI、第5世代移動通信(5G)の新興技術と、グリーン成長を深いレベルで融合させるとした。
ライフスタイルに関しては、グリーンや低炭素型商品の供給と消費の拡大も盛り込んだ。他にも、教育、社会活動に関してもグリーンと低炭素を組み込み、全員参加の状態の形成していくという。
金融でも「グリーンファイナンス強化」を標榜。グリーン投資商品の奨励、金融当局での気候変動マクロ・プルーデンス政策の組み込み、銀行等のグリーンファイナンス促進の指導、グリーンプロジェクトの上場やリファイナンス支援、グリーンボンドの規模拡大、国家低炭素トランジション基金の設立を掲げた。
【参照ページ】中共中央 国务院关于完整准确全面贯彻新发展理念做好碳达峰碳中和工作的意见
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