米大統領府(ホワイトハウス)は10月21日、米国政府の中核的な国家安全保障及び外交政策部門による一連の気候変動に関する分析結果を発表した。バイデン大統領は、気候変動問題を米国の安全保障・外交問題とする政策を採っており、今回具体的な方向性を示した。
今回発表した分析は、1月27日に署名された「国内外における気候危機対策」に関する大統領令14008と、2月29日に署名された「難民の再定住プログラムの再構築および強化、ならびに気候変動が移民に与えるインパクトの計画」に関する大統領令14013に基づくもの。国家情報長官室(ONDI)、国防総省(DOD)、国土安全保障省(DHS)、国家安全保障会議(NSC)が分析にあたった。
米国政府のインテリジェンス機関を統括する国家情報長官室は、18のインテリジェンス機関に分析を支持し、気候変動に関する初の国家情報評価(NIE)の作成を監督した。気候変動の物理的リスクと移行リスクは、米国の国家安全保障上の利益に対する多くのリスクを悪化させると判断。一方、これらすべてのリスクが増大し、いずれの国も気候変動に直接関連する課題から免れることはできないとも判断した。
作成に際しては、各連邦機関から、前提となる観測データと気候モデルを提供した。国家情報長官室は、気候変動による地政学リスクを評価した。具体的には、「気候変動対応での地政学的緊張関係」「気候変動悪化による地政学的影響」「気候変動による国単位の不安定化」の3つのレベルで分析した。
国防総省が気候変動の戦略的リスクに焦点を当てた初の報告書では、気候変動の脅威と、世界的な気候変動対策は、いずれも米国の国防戦略上の利益、関係、競争、優先順位に影響を与えるとした。国防総省の気候リスク分析(DCRA)は、国防総省の戦略、計画、予算等の重要文書や、同盟国やパートナーとの関わりの中で、気候への配慮を組み込むことを明確にした。
国土安全保障省(DHS)は、戦略的競争、人口動態、インフラの老朽化、新興技術等によって生じる気候変動リスクの変化への対応を導くため、「気候変動に対処するための戦略的枠組み」を発表した。「個人やコミュニティが気候変動への対応力を身につけること」「気候変動に起因する緊急事態の増加に対応する準備を整えること」「戦略、政策、プログラム、予算に気候科学を採り入れること」「持続可能で回復力のある分野に投資すること」「DHSの労働力が気候変動に関する情報を得られるようにすること」の5つを掲げた。
移民に関する報告書は、ホワイトハウス自身が作成した。移民は気候変動の影響に対する重要な適応形態であり、場合によっては気候変動の脅威、生活や福祉に対する不可欠な対応策ともなるとした。そのため、安全、秩序、人道的であることを保証するために慎重な管理が必要であると認識。開発および人道支援プログラムは、不安定な状況下での強制移住や移動の根本的な原因に対処するのに役立つことを確認した。
また、国家安全保障会議は、気候変動と移民に関する省庁間の常設ワーキンググループを設置。米国政府の科学、開発、人道、民主・人権、平和・安全保障の各部門の代表者が協力し、気候変動の影響を受けやすい人々に影響を与える米国の政策、戦略、予算を調整することを決めた。
【参照ページ】Fact Sheet: Prioritizing Climate in Foreign Policy and National Security
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