世界保健機関(WHO)は10月8日、2020年のメンタルヘルス報告書「メンタルヘルス・アトラス」を発行。新型コロナウイルス・パンデミックにより、メンタルヘルス支援の必要性が高まっている中、必要とされるメンタルヘルスサービスが世界的に提供されていないことがわかった。
同レポートは、メンタルヘルスに関する政策、法律、ファイナンス、人的資源、サービスの利用状況、データ収集システム等で171ヶ国のデータを収集。3年毎に発行している。また、WHOの「包括的メンタルヘルス行動計画」の目標達成に向けた進捗状況をモニタリングする役割も担っている。掲げられている目標はほとんどが未達成となる見込みとなってきた。
2020年には、WHO加盟国194ヶ国のうち、メンタルヘルスに関する政策や計画が、国際的または地域的な人権規範に沿ったものと報告した国はわずか51%。目標の80%を下回った。また、メンタルヘルスの促進・予防プログラムに関する目標を達成した国は52%にとどまり、80%を大きく下回っています。唯一達成された2020年目標は、自殺率の10%削減だったが、それでも単独の予防戦略、政策、計画を持っていると答えた国は35ヶ国にとどまった。
一方で、メンタルヘルスに関する政策、計画、法律の導入や、メンタルヘルスに関する主要指標の報告能力の向上等で着実な進歩もみられたが、政府の保健予算のうち、メンタルヘルスに費やされる割合は、ここ数年ほとんど変わっておらず、依然として2%前後にとどまっている。さらに、政策や計画に必要な人材や財源の見積もりが含まれていたとしても、回答国のうち、必要な人材が割り当てられたと答えたのは39%。必要な財源が提供されたと答えたのは34%だった。
またWHOは、メンタルヘルス医療を地域社会に組織的に分散させることを長年推奨してきたが、メンタルヘルス医療を、プライマリーケアに統合するための基準をすべて満たしている国は回答国の25%しかない。ほとんどの国では、研修や監督に進歩が見られるものの、プライマリーヘルスケアにおけるメンタルヘルスの治療薬の供給や心理社会的ケアはまだ少ないという。実際に、メンタルヘルスに対する政府支出総額の70%以上が精神病院に割り当てられているのに対し、高所得国では35%。多くの国で、精神病院や施設での入院治療に集中している結果となった。
精神病、双極性障害、うつ病等の特定疾患への治療が、国民健康保険や償還制度に含まれていると報告している国の割合は、2017年の73%から2020年には80%に増加している点は評価した。
【参照ページ】WHO report highlights global shortfall in investment in mental health
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