全米ビジネス航空協会(NBAA)は10月12日、2021年ビジネス航空大会・展示会(NBAA-BACE)の場で、2050年カーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)を宣言した。航空業界では、英航空業界団体UK Sustainable Aviation coalitionが2020年2月に同様の宣言を発表。米国もそれに続いた形。
【参考】【イギリス】航空業界、2050年までのカーボンニュートラルでロードマップ提示。業界主導で政府動かす(2020年2月8日)
NBAAは、2009年に「気候変動に関するビジネス航空のコミットメント(BACCC)」を採択。2050年までに二酸化炭素排出量を50%減を目標として設定。2010年から2020年までに毎年2%ずつ向上し、2020年からは二酸化炭素排出量を維持しながら業界成長を実現するとしていた。今回12年ぶりに大幅に目標を引き上げる。
今回、2021年ビジネス航空大会・展示会(NBAA-BACE)では、一般航空製造者協会(GAMA)、国際ビジネス航空協議会(IBAC)、NBAAが、連名で、2020年から2030年の間に燃費を毎年2%ずつ向上させる目標を継続することも宣言した。機体材料の軽量化、積層造形による部品の削減、推進力の革新、複合材による空力の最適化、高度な合金、スキンコーティング、アクティブウィングレット等の機体でのイノベーションを進める。
米国では、シェブロン、デルタ航空、グーグルの3社が9月7日、クラウドベースの技術を用いて、持続可能なジェット燃料(SAF)による二酸化炭素排出量削減量を算出するためのツールを共同開発すると発表した。透明性の高い共通の算出モデルを開発し、航空業界全体での活用を目指す。同プロジェクトでは、まず、シェブロンのエル・セグンドでSAFを生産し、ロサンゼルス国際空港(LAX)でデルタ航空に販売する。グーグルは、両社からデータを受け取り、分析フレームワークを構築する。
英ケンブリッジ大学も8月25日、航空宇宙、経済、政策、気候科学の国際的な専門家を結集したグループ「Aviation Impact Accelerator(AIA)」を創設。再生可能エネルギー、原材料調達、燃料生産・輸送、新たな航空機技術開発、運航改善まで、航空分野全体でのイノベーションや政策提言を検討する。同組織は、ケンブリッジ大学のウィトル研究室とケンブリッジ・サステナビリティ・リーダーシップ研究所(CISL)が主導。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、メルボルン大学も参画。ロールス・ロイス、ボーイング、BP、ヒースロー空港、シーメンス・エネルギーが支援し、世界経済フォーラム(WEF)、英皇太子のサステナブル・マーケット・イニシアチブ、ケンブリッジ・ゼロ、MathWorks、SATAVIAともパートナーシップを締結した。
日本では、全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)が10月8日、持続可能なジェット燃料(SAF)の活用促進に関する市場調査を行い、考察をまとめたレポート「2050年航空輸送におけるCO2排出実質ゼロへ向けて」を共同発表した。今後航空需要が大きく拡大すると見込まれるアジア圏では、SAF市場は2050年には約22兆円におよぶ巨大な市場になると見通した。
その上でANAは10月14日、企業向けのSAF活用プログラム「SAF Flight Initiative: For the Next Generation」を日本で初めて発足。貨物輸送や重要印出張で、SAF使用量分を割当て、追加費用を徴収する。日本通運、近鉄エクスプレス、郵船ロジスティクスの3社が、すでに参画を表明。9月29日にSAFを活用した貨物便を9月29日に共同実施した。同プログラムは、企業のスコープ3の二酸化炭素排出量の削減向けに用意されており、ANAは認証もつける。同様の施策は、すでにユナイテッド航空やデルタ航空等が始めていた。
【参考】【国際】ユナイテッド航空、持続可能なジェット燃料活用で11社と共同プログラム発足。武田薬品も(2021年4月15日)
【参考】【アメリカ】デルタ航空、2030年カーボンニュートラルに向け投資分野発表。顧客との協働も(2021年4月30日)
ANAは他にも、廃棄物を2019年度比で2030年までに70%減、2050年までにゼロという目標も掲げている。その一環で、手荷物梱包用のビニール袋の提供を10月31日に終了。ベビーカーと車イスに関しては梱包用のビニール袋の提供を継続するとした。車イスでは再利用可能な袋も提供する。同社はすでに、機内食容器や食器を紙製や木製、バガス製のものに転換し始めている。
【参照ページ】Business Aviation Pledges Net-Zero Carbon By 2050 and Increasing Fuel Efficiency as Part of Renewed Climate Commitments
【参照ページ】Chevron, Delta Air Lines, and Google Announce Intent to Measure Sustainable Aviation Fuel Emissions Data, Increase Industry Transparency
【参照ページ】University of Cambridge leads team developing a simulator to accelerate the path to net zero flight
【参照ページ】ANAとJAL、2050カーボンニュートラルに向けたSAF(持続可能な航空燃料)に関する共同レポートを策定
【参照ページ】「SAF Flight Initiative」プログラムを立ち上げ、持続可能な航空燃料等でお客様の航空輸送に係るCO2削減に貢献します
【参照ページ】持続可能な社会の実現に向け脱プラスチックの取り組みをさらに加速します
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら