国際エネルギー機関(IEA)は10月13日、世界エネルギー展望をまとめた2021年版レポート「世界エネルギー見通し(World Energy Outlook)2021」を発行。将来のシナリオを更新した。今年度のWEOでは初めて、全てのシナリオで、将来の石油需要が最終的に減少するとの見通しとなった。
WEOは、11月に開催される第26回気候変動枠組条約グラスゴー締約国会議(COP26)に向けた重要なインプット情報として整理された。IEAが提示しするエネルギー・シナリオは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のシナリオ分析の中で非常に多く使われてもいる。
IEAは今回、シナリオを大きく修正し、4つのシナリオに整理した。具体的には、野心的なトランジションの強い順に、2050年ネットゼロ・シナリオ(NZE)、持続可能な開発シナリオ(SDS)、発表誓約シナリオ(APS)、宣言政策シナリオ(STEPS)。
2050年ネットゼロ・シナリオ(NZE)
2050年に二酸化炭素ネット排出量ゼロを実現できるというシナリオ。気温上昇は2100年に1.5℃をやや下回る。
持続可能な開発シナリオ(SDS)
再生可能エネルギーへの転換が大きく進み、2070年に二酸化炭素ネット排出量ゼロを実現できるというシナリオ。一昨年まではSDSが気候変動対策が最も進むシナリオだった。気温上昇は2100年に1.5℃をやや上回る。
発表誓約シナリオ(APS)
今回新たに誕生したシナリオ。世界中の政府の国別削減目標(NDC)やカーボンニュートラル目標等を考慮したシナリオ。化石燃料の需要は2025年にピークを迎え、世界の排出量は2050年までに40%減少する。気温上昇は2100年に2.1℃。
宣言政策シナリオ(STEPS)
各国政府の現状の政策と、現在策定中の具体的な政策を反映したシナリオ。エネルギー源の低炭素化は進むが、年間の排出量は現状レベルにとどまる。気温上昇は2100年に2.6℃。
(出所)IEA
IEAは全体の総括として、2050年までにカーボンニュートラルを達成するための追加投資は、見た目よりも負担は少ないことを強調。必要な排出削減量の40%以上は、省エネ、ガス漏出の抑制、すでに最も競争力の高い電源となった風力発電や太陽光発電を普及拡大で、十分に採算がとれるとした。
原子力発電については、全てのシナリオでやや増える程度の見立てをし、カーボンニュートラルのために原子力発電が必要というような表現には全くなっていない。
【参照ページ】World Energy Outlook 2021 shows a new energy economy is emerging – but not yet quickly enough to reach net zero by 2050
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