アントニオ・グテーレス国連事務総長は9月23日、初の「国連食料システムサミット(UNFSS)」を開催。各国政府だけでなく、NGO、金融機関、農家、先住民族等も出席。「飢餓ゼロ」「貧困ゼロ」「ジェンダー平等」「気候変動」を中心に合計で約300のコミットメントが発表された。同サミットは、グテーレス事務総長が2019年に提唱し、新型コロナウイルス・パンデミックの影響もあり、2年越しで実現した。
同サミットでは、世界で30億人が栄養不足状態にある中、国連持続可能な開発目標(SDGs)の目標として掲げる「貧困ゼロ」「飢餓ゼロ」の達成を目指すために招集された。さらに、新型コロナウイルス・パンデミックにより、2020年には貧困者が最大1億2,400万人増加し、2030年には約6億人が貧困状態にあるということも危機感となっている。その上、将来的に、気候変動で世界の食糧事情がさらに悪化することも考慮されている。飢餓人口は2020年に世界で7億2,000万人から8億1,100万人に達すると推定されている。
同サミットのコミットメント宣言ページには、複数の団体による集団的なコミットメントが148も登録。国連は、18ヶ月もの間、世界的に結集を呼びかけてきたことの成果とした。また85ヶ国の首脳が出席し、直接コミットメントを発表した。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は、同サミットに際し、「栄養」「自然を軸としたソリューション」「農家の所得やコミュニティ」「レジリエンス」の4分野と、「実施手段の支援」を含めた5つの優先順位を設定。それに呼応する形で、NGO、農業従事者、女性、若者、先住民族が主導するマルチステークホルダー・イニシアチブが数多く誕生した。
栄養分野では、Global Alliance for Improved Nutrition(GAIN)や国連食糧農業機関(FAO)を中心とした「A Coalition of Action for Achieving Zero Hunger」「The Coalition of Action for Healthy Diets from Sustainable Food Systems for Children & All」や、世界食糧計画(WFP)による「School Meals Coalition」、世界資源研究所(WRI)等による「Coalition of Food is Never Waste」が発足した。
自然を軸としたソリューション(NbS)では、国際農業研究協議グループ(CGIAR)等による「Coalition for Food Systems Transformation through Agroecology」、FAOやWRI等による「Coalition for Aquatic / Blue Foods」、CGIAR等による「Global Sustainable Livestock Coalition」「Coalition of Action 4 Soil Health」「Coalition to Repurpose Public Support to Food and Agriculture」「Deforestation-free and conversion-free supply chains」「Land and Freshwater Nexus」等が発足した。
農家の所得やコミュニティの分野では、ケア・インターナショナルやFAOによる「Coaliton of Action on Decent Work and Living Incomes and Wages for Al Food Systems Workers」「Making Food Systems Work for Women and Girls」、国際農業開発基金(IFAD)による「Public Development Banks Coaltion」、FAOやGAINによる「Coalition on Sustainable and Inclusive Urban Food Systems」、FAOによる「Indigenous People's Food Systems」等が発足した。
レジリエンスでは、WFPや国連資本開発基金(UNCDF)による「Local Food Supply Chains Alliance」、WFPと国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局による「Climate Resilient Development pathways(CRDP)」等が発足した。
また、政府からのコミットメントでは、米国政府からは、食料の気候変動への対応と貧困層の食糧支援で5年間で100億米ドル(約1.1兆円)の資金拠出を約束。ニュージーランド政府やホンジュラス政府からは、自然を軸としたソリューションを促進するため、先住民族のリーダーシップを促進することを表明した。
一方、今回のサミットの関しては、草の根NGOから批判の声もあり、500以上のNGOが参加をボイコットする結果にもなった。背景には、UNFSSに大企業が積極的に参加することを忌避する声や、草の根NGO等とのボトムアップ型のサミット運営にしなかったことに対する批判の声が上がっている。批判運動は、NGOの「市民社会メカニズム(CSM)」が中心的な役割を担った。
【参照ページ】Nearly 300 commitments from civil society, farmers, youth and Indigenous Peoples and Member States highlights Summit’s inclusive process to accelerate action
【参照ページ】World leaders commit to tackling global hunger, climate change and biodiversity loss at historic UN Food Systems Summit
【参照ページ】Solutions and coalitions
【参照ページ】Letter to UNSG on UN food systems summit
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