2050年までの運用ポートフォリオのカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)にコミットするアセットオーナーのイニシアチブ「Net-Zero Asset Owner Alliance(NZAOA)」は9月23日、気候変動ネガティブエミッション(CDR)技術に対するポジションペーパーを発表した。
同報告書では、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の1.5℃特別報告書を受け、二酸化炭素排出量の削減だけでなく、ネガティブエミッション技術も同時に開発していく必要があると強調。ネガティブエミッション技術の活用については、自社バリューチェーン上の吸収を行う「Abatement(削減)」、自社バリューチェーン外での吸収を行う「Compensation(補償)」、大気からの直接回収(DAC)を行う「Neutralization(中和)」の3つに区分して分析。今回レポートでは、3つ目のNeutralizationに対象とした。
同報告書では、世界の平均気温を1.5℃に抑えるためには、カーボンニュートラルへのアクションとして、CDRで2025年までに年間0.5tから1.2Gtの二酸化炭素の除去、2050年までに年間6tから10Gtの除去の必要性があると指摘した。2020年の世界全体の二酸化炭素排出量の総量は42Gt。
中和では、自然を軸としてソリューション(NbS)と、科学技術での吸収を行うDACCS(大気直接回収型炭素回収・固定)」の双方についてのポジションを示した。自然を軸としたソリューションに対しては、森林火災や恣意的な森林破壊、農業慣行の変更というリスクを伴うため、これらのリスクをマネジメントするメカニズムの整備が必要との立場を明らかにした。
DACでは、DACCSに関しては、高コストやエネルギー消費量の多いことを課題視しつつ、これらの課題が解決すれば大きなポテンシャルがあるとした。バイオエネルギーとCCSを組み合わせたBECCSに関しては、バイオエネルギーが自然環境変化への脆弱性が高いことや、食料との競合のリスクがあるとし、ポテンシャルとしてはDACCSの方が有望との見方を示した。
ネガティブエミッションのスケール化については、カーボンクレジットの品質を直ちに向上させ、炭素価格の上昇につなげる必要があると提言。世界的なカーボンプライシングの市場メカニズムとしてカーボン炭素クレジットの使用を公式化していくことが重要とした。また政策的に市場形成を促し、自発的なアクションと、義務的アクションの「インセンティブ+マンデート」を打ち出すべきとした。
【参照ページ】NET-ZERO ASSET OWNER ALLIANCE BACKS CALL TO SCALE-UP CARBON REMOVAL FROM ATMOSPHERE
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら