欧州中央銀行(ECB)は9月22日、世界経済全体を対象とした気候変動ストレステストの結果を発表した。同テストでは、3つの異なる気候政策シナリオを活用し、世界中の企業400万社以上と、ユーロ圏の銀行1,600社を対象とし、移行リスクと物理的リスクを双方分析した。
【参考】【EU】ECB、気候変動は金融システミックリスク招くおそれありと発表。特別レポート発行(2019年6月3日)
ECBは、今回のストレステストの結果から、企業と銀行は早いタイミングでカーボンニュートラル化の方針を採用することで、明白に有益な結果をもたらすということがわかったと表明。また、気候変動リスクの影響は、ユーロ圏の特定の地域やセクターに集中していることもわかった。特に、物理的リスクに最も晒されている地域にある企業は、非常に深刻で頻繁な自然災害に直面する可能性があり、その結果、信用力に影響を及ぼすことになるという。
欧州では、北部では洪水が多く、南部では熱ストレスや山火事が多い等、物理的リスクが偏在している。移行リスクでは、鉱業や電力等の炭素集約型産業への影響が大きい。短・中期的にはデフォルトの確率が高くなると指摘した。一方で、早い段階で対策を講じることで、企業のエネルギー効率が向上し、エネルギー価格が全体的に安くなる結果、中長期的には初期費用を上回るメリットがあると結論づけた。
気候変動への対応がないシナリオでは、ユーロ圏の銀行は深刻な影響を受ける可能性があるという。企業の融資ポートフォリオの予想損失額は、物理的リスクの増加に伴い、時間の経過とともに大幅に上昇し、今後30年間で危機的状況に陥る可能性があることと示した。2050年には、ユーロ圏の銀行の平均的な企業負債ポートフォリオは、気候変動が大幅に進む「ホットハウス・ワールド」シナリオの場合、秩序ある移行シナリオと比べ、デフォルトする可能性が8%上がる。
融資ポートフォリオのみでは、気候に起因する影響はさらに顕著となり、特に時間の経過とともに大きくなる。「ホットハウス・ワールド」シナリオでは、2020年と比較して2050年にデフォルト可能性が30%上がる。この増加率は、同シナリオでの平均的な増加率の5倍となった。
ECBは、今回の気候変動ストレステストを、ECBの気候ロードマップの最初のステップと位置づけている。今回の手法と結果は、2022年にECBが直接監督する銀行を対象とした気候ストレステストに反映。また、2022年の第1四半期に計画されているユーロシステムのバランスシートに対する気候ストレステストにも反映される予定。
【参照ページ】Firms and banks to benefit from early adoption of green policies, ECB’s economy-wide climate stress test shows
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