英グラント・シャップス運輸相は9月13日、国際海運からの二酸化炭素排出量を2050年までにカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)にする政策を打ち出した。国際海事機関(IMO)の場で国際合意を目指す。
IMOは現在、2050年までに二酸化炭素排出量を2008年比で半減、原単位排出量を2030年までに同40%、2050年までに同70%削減を国際目標として設定している。英政府の今回の発表は、現在の国際合意内容を大幅に引き上げにいくものとなる。
英政府は、今回の政策の狙いについて、英国が率先して海運でのカーボンニュートラルを推し進めることで、英国内に高度な技術を要する雇用を創出し、将来の世代のためにクリーンな海運と貿易の体制を構築していくことと話した。そのためイノベーションに焦点を当てる。
シャップス運輸相は今回、2025年までにゼロエミッション船を就航させ、2030年までにクリーンで環境に優しい国際海運の可能性を開花させるという野心的な目標を披露した。
英政府は同日、外務省で閣僚級の円卓会議を開催したことを皮切りに、海運関連の業界関係者とともに、脱炭素化、沿岸のコミュニティ、港町や産業に焦点を当て、英国のあらゆる地域をレベルアップさせる方法について議論する。
今回の発表にあわせ、ロンドン国際海運ウィークが同日に開幕。運輸省は9月14日は、各年発行の「海事隔年レポート」を発行し、2050年戦略も示した。9月15日には、世界で最も環境に配慮した最新のクルーズ船ターミナルがサウサンプトン港でオープンした。
英ジョンソン首相は2020年11月に発表した「10重点施策(10 Point Plan)」の中で、2025年までにゼロエミッション船を商業運航するという政府の公約を推進するための革新的R&Dを支援するため、補助金プログラム「クリーン・マリタイム・デモンストレーション・コンペティション」の設置も発表していた。シャップス運輸相は9月15日、55の受賞プログラムを発表。総額で2,300万ポンド(約35億円)を支給した。
【参考】【イギリス】首相、2030年ガソリン・ディーゼル新車販売禁止方針表明。脱炭素に向け10重点施策も発表(2020年11月19日)
受賞プログラムの中には、史上初のグリーン水素駆動の潜水艦研究も選ばれた。まずは、グラスゴーとベルファストを結ぶ試験的な航路で、マイクロプラスチックを回収する潜水艦を目指す。将来的には、貨物輸送を行い、1年で27tの二酸化炭素排出量削減が可能。船団となると、年間で3億tの削減ポテンシャルがあるという。
また他の受賞プログラムでは、洋上風力発電での電動船舶の充電ステーション開発の案件もある。電気自動車(EV)のように、船舶が必要なタイミングで充電できるようにする。
英運輸相はすでに、省内に「船舶排出削減室(UK SHORE)」を設立する政策も発表している。
【参照ページ】UK calls for zero global shipping emissions by 2050 as greenest ever London International Shipping Week begins
【参照ページ】World’s first green submarine among winners of the UK’s biggest clean maritime competition
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