東京電力ホールディングスは8月4日、2011年の福島第一原子力発電所事故以降、数年ごとに原子力損害賠償・廃炉等支援機構と合同で策定している「総合特別事業計画」で第4次の詳細事業計画文書を公表した。7月21日に東京電力ホールディングスが申請し、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が8月4日に承認した。
同計画では、東京電力での事故後対策の必要資金として、廃炉費用が8兆円、被災者賠償資金が7.9兆円でうち同社負担分が3.9兆円、除染に4兆円が必要。そのうち、東京電力側が廃炉と被害者賠償に年間5,000億円を、除染に年間4,500億円を捻出することにコミット。別途必要となっている中間貯蔵1.6兆円については、全額国が負担することとなっている。
柏崎刈羽原子力発電所に対し、オペレーションの不備で運転禁止命令が出されている点については、同社に対する信頼が大きく損なわれ、企業存続にかかわるとの危機感を表明。「抜本的な改革を断行」と表現したが、社会からの信頼回復につながるかは未知数。
福島第一原子力発電所周辺で大量発生している放射性物質の浄化処理後の「ALPS処理水」処理については、国際原子力機関(IAEA)等の専門家による指導・助言を受けつつ、2年程度後を目処に海洋放出を開始できるよう準備を進めるとした。ALPS処理水に対しては、4月13日に開催した廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議で2年後を目途にALPS処理水を海洋放出する方針が決定されている。経済産業省は、ALPS処理ではトリチウムは除去できないが、トリチウムは、放射線が弱く、人体への影響はほぼないとの見解を示している。
カーボンニュートラル関連では、2030年度の二酸化炭素排出量を2013年比50%削減し、2050年にカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)を達成する目標を提示。2030年までに最大3兆円をカーボンニュートラル関連の投資に回すことを宣言した。
再生可能エネルギーでは、2030年度までに、洋上風力発電を中心に国内外で6GWから7GWの再生可能エネルギー電源を開発。2030年度までに年間1,000億円規模の純利益を目指すとした。2030年までに、中部電力との合弁子会社JERAの非効率な石炭火力発電所は全て廃止することも確認した。高効率石炭火力発電所は、2040年代にアンモニア専焼を狙い、水素混焼火力発電も2030年代に本格運用を目指すという。
電化では、同社が54.7%、中部電力が36.4%を出資しているe-Mobility Powerを通じ、EV充電スタンドを2025年度の現状の2倍となる13,000基に増やす。事業としては、2023年度からは黒字化させ、2030年度には会員顧客を現状の10倍の100万人にしたいとした。蓄電池エネルギーサービスも2021年度内に事業化する。
【参照ページ】アナリスト向け説明資料
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