米コーネル大学の研究者は8月12日、ブルー水素のライフサイクル全体での二酸化炭素排出量を分析した初の査読付き論文を発表。カナダ・アルバータ州でのロイヤル・ダッチ・シェルと、米テキサス州のエアプロダクツのブルー水素生産プラントのデータを参照しつつ、ライフサイクル全体の二酸化炭素排出量を算出したところ、石炭火力発電以上に排出量が多いことが判明した。カーボンニュートラル実現でのブルー水素の可能性に大きな暗雲が立ち込めてきた。
今回の論文を発表したのは、ロバート・ハワース生態学・進化生物学部教授らのチーム。発表した論文「How green is blue hydrogen?」は、学術誌「Energy Science & Engineering」に査読付き論文として掲載された。
ハワース教授らは、まず、メタンガス改質でのグレー水素のライフサイクル全体での二酸化炭素排出量を算出した。その上で、既存のブルー水素プラント2ヶ所の実績データも参照しつつ、改質プロセスで発生した二酸化炭素の回収率と、回収プロセスに必要なエネルギー生成での二酸化炭素排出量を加味し、ブルー水素のライフサイクル全体での二酸化炭素排出量を算出した。
その結果、グレー水素の生産では、メタンガスを水素ガスに改質する過程で、必要な熱と圧力を確保するために大規模なエネルギーを必要とし、エネルギーを天然ガスで賄う場合、天然ガスのライフサイクル全体でメタンガス漏出が発生していることを考慮に入れる必要がある。その結果、グレー水素では、石炭火力発電やガス火力発電と比べて、大幅に二酸化炭素排出量が増えることがわかった。
さらに、ブルー水素の生産では、改質プロセスでの二酸化炭素排出量はある程度吸収されるものの、回収プロセスに必要なエネルギーを同様に天然ガスで賄う場合、同様にメタン漏出が発生。また、回収プロセスに必要なエネルギー生成からの二酸化炭素排出量は、既存の施設では回収されていないことを考慮すると、ブルー水素でも大規模に二酸化炭素とメタンガスが発生する。
その結果、ブルー水素は、グレー水素と比べて、メタンガスも勘案した二酸化炭素排出量を9%から12%ほどしか減少させることはできず、石炭火力発電とガス火力発電と比べると、20%以上も排出量が増えるというデータが得られた。
(出所)How green is blue hydrogen?
【参照ページ】How green is blue hydrogen?
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