2021年夏にも世界各地で大規模な山火事が発生。米国の西海岸、ロシアのシベリア、ギリシャ、トルコ、イタリア等では、異例の規模の山火事が発生し、避難民まで出ている。その中で、英紙フィナンシャル・タイムズが8月3日、山火事と、森林マネジメントでのカーボンオフセット・クレジットへの影響を報じた。
米国西海岸での山火事では、マイクロソフトやBPが大量購入しているカーボンオフセットの森林で大規模山火事が発生。カーボンオフセットでは将来の二酸化炭素排出量吸収分に価値をつけ、取引されるため、当初予定したオフセットが実現できなくなってきている。
米オレゴン州クラマス・イーストの森林では、すでにカーボンオフセットが約80万販売され、すでに14万が成約済み。マイクロソフトは、クラマス・イーストと、隣のクラマス・ウエストから24万のオフセットを購入していたが、今回大規模火災が発生した。
米ワシントン州コルビルでも、2016年から合計500万のオフセットが販売され、すでに140万が成約済み。BPだけで1億米ドルを投じ、130万を購入した。2020年12月には、現地でカーボンオフセットを創出する企業「Finite Carbon」の株式の過半数まで取得した。
カーボンオフセット・プログラムでは、創出されても敢えて販売しない「バッファー」分を約10%から20%用意し、プロジェクトの問題から生じる不足分を補填する制度があるという。しかし、研究者の間では、すでにバッファー分が少なすぎるとの計画も表明されてきている。例えばマイクロソフトが購入しているオフセットに関しては、環境NGOのCarbonPlanから、「2020年規模の火災が4年毎に発生すれば、バッファー分は使い切ってしまう」と計算結果も示された。
アメリカン・カーボン・レジストリによると、米国では、29州の143のオフセット・プログラムから創出されたバッファー分は、合計約3,000万t。バッファー分は、十分に備えられているという。しかし、山火事が想定規模よりも大きくなっていけば、クレジット創出分の再評価も必要になり、創出されたクレジットの取消や、成約済みの場合は、将来のオフセットプログラムとの間で相殺される必要も出てくると言われている。
【参照ページ】US forest fires threaten carbon offsets as company-linked trees burn
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