【国際】IPCC、第6次報告書のWG1報告書公表。2040年に1.5℃上昇。2100年に2m海面上昇のリスク

　気候変動に関する政府間パネル（IPCC）は8月9日、IPCC第6次評価報告書（AR6）の第1作業部会（WG1）報告書（自然科学的根拠）を公表した。WG1は、7月26日から8月6日に開催され、WG1報告書を受諾するとともに、政策決定者向け要約（SPM）も承認していた。

　IPCC第6次評価報告書は、2013年から2014年にかけ発行された第5次評価報告書（AR5）から8年ぶりの報告書。しかしIPCCは2018年から2019年にかけ、特別報告書として、「1.5℃特別報告書（SR1.5）」「土地関係特別報告書（SRCCL）」「海洋・雪氷圏特別報告書（SROCC）」の3本を発行しており、そこからは2年から3年の間隔で最新報告書が発表された形。

【参考】【国際】IPCC、気候変動に関する報告書を公表「今世紀末までに温室効果ガス排出ゼロに」（2014年11月17日）
【参考】【国際】IPCC、「1.5℃特別報告書」発表。1.5℃気温上昇でも災害拡大、迅速な異次元アクション必要（2018年10月9日）
【参考】【国際】IPCC、気候変動と土地に関する特別レポート発表。バイオ燃料の将来可能性に懐疑的 （2019年8月25日）
【参考】【国際】IPCC、気候変動による海洋と氷圏への影響を分析した報告書発表。該当地域に大きなリスク（2019年9月29日）

　第6次評価報告書は、今回のWG1報告書（自然科学的根拠）の他に、2022年2月にWG2報告書（影響、適応、脆弱性）、同3月にWG3報告書（緩和）、同9月に統合報告書を発行する計画。日本では、文部科学省、気象庁、環境省、経済産業省の連名で、日本語の要約版も発表された。

　今回の報告書では、まず、人間の活動が地球温暖化の原因となっている可能性が高まった。AR5では「温暖化には疑う余地はない。人間の影響は明瞭」としていたが、今回のAR6では「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」となり、完全に事実確定された。

　今後の気温上昇予測は、AR5から大きく悪化した。今回の予測シナリオでは、排出量が最も少ない「SSP1」から最も多い「SSP5」までの5つを用意したが、いずれのシナリオでも2040年時点で産業革命前から1.5℃上昇を突破。特別報告書での予測より10年早まった。

（出所）環境省

　海面上昇では、大きく上振れするリスクが示された。SSP5の場合、1995年から2014年と比べて、2100年には0.63mから1.01m上昇、2015年には0.98mから1.88m上昇する。また2100年までに2m、2150年までに5m上昇する可能性も多少あるとした。また、AR5と同様、海洋深部の温暖化と氷床の融解が続くため、海面水位は数百年から数千年もの間上昇し続け、上昇した状態がさらに数千年にわたり継続すると見通した。

　その他、極端な猛暑については、最も暑い日の気温が最も上昇するのは一部の中緯度帯、半乾燥地域及び南米モンスーン地域で、地球温暖化の約1.5倍から2倍の速度になる。降水量も、1995年から2014年までと、2081年から2100年までの比較では、SSP5では1%から13%増加。SSP2でも1.5%から8%増加。極端な豪雨では、世界規模では、地球温暖化が1℃進行するごとに、極端な日降水量の強度が約7％上昇する。台風やハリケーン等でも、発生割合と巨大化が進行する。

（出所）環境省

【参照ページ】Climate Change 2021: The Physical Science Basis
【参照ページ】気候変動に関する政府間パネル（IPCC）第６次評価報告書第Ｉ作業部会報告書（自然科学的根拠）の公表について

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