MS&ADインシュアランス グループ ホールディングスは7月21日、傘下のMS&ADインターリスク総研と、芝浦工業大学工学部土木工学科平林由希子教授と東京大学生産技術研究所山崎大准教授らの研究グループと共同で、グローバルでの将来の洪水リスク分析の研究成果を発表。今後、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトとして、データの実用化に向けた研究を加速させると表明した。
今回の研究プロジェクト「グローバルな洪水リスク情報の効果的な活用方法に関する研究(LaRC-Floodプロジェクト」では、過去35年間の世界の洪水頻度の変化を衛星画像から検出。加えて、近年の洪水に対する気候変動影響を、気候モデルを用いて解析した。結果、観測とモデルの両面から、一部地域では気候変動影響が河川洪水にすでに現れ始めていることがわかった。
今回開発した解析手法では、河川氾濫域の1984年から2000年と、2000年から2013年の間の水の存在比の変化は、河川の年間最大日降水量の増減傾向と相関が高いことを特定。これにより、河川流量の観測がない地域でも、洪水の頻度の変化を衛星画像から検出できる可能性が出てきた。世界全体の状況では、過去の洪水頻度の変化は、観測ができている場所の29%で増加傾向、41%で減少傾向だった。
過去の洪水毎のアトリビューション調査では、22の洪水イベントのうち、64%にあたる14イベントで、過去に進行した地球温暖化の結果、その発生しやすさが変化していた。北半球への降水量の増加や、気温の増加による積雪量の減少等も、融雪による春の洪水の頻度を上げるという。
LaRC-Floodプロジェクトは、2018年から気候変動による将来の洪水リスクマップを公開している。また7月1日から新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「官民による若手研究者発掘支援事業」に基づき、テーマ名「気候モデル出力と地理情報ビッグデータを活用した広域洪水リスク情報創出(JP21500379)」で実用化研究を続ける。
【参照ページ】気候変動により変わりつつある洪水リスクを把握
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