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【中国】全国炭素排出量取引市場が開幕。まずは石炭火力が対象。今後はガス火力や重工業にも

 中国の上海環境エネルギー取引所は7月16日、中国全国規模の二酸化炭素排出量取引市場が開幕したと発表した。同市場は、40億t以上の二酸化炭素排出量カバーする世界最大の二酸化炭素排出量取引制度となる。発展改革委員会が2017年に開設を正式発表して以来、3年半を経て、ようやく開設に漕ぎ着けた。

【参考】【中国】発改委、全国統一の二酸化炭素排出権取引制度設立。まず電力事業者1,700社が対象(2017年12月27日)

 中国では、2011年に北京、天津、上海、重慶、湖北、広東、深圳の7省・市で地域単位の排出量取引制度を試験導入することを決定。2013年から導入され、2016年には福建省と四川省も対象に加わり、制度設計の改善や効果検証を行ってきた。現在7省・市で導入されている制度では、鉄鋼、電力、セメント等の20以上の業種が対象で、約3,000社をカバー。二酸化炭素排出量は全体で累積排出量は4.4億t、累積取引額は約104億7,000万人民元にもなっている。当局によると、排出量取引制度の結果、コストを抑えながら、排出量を削減する効果が実証されたという。

 パイロット市場での炭素価格は、試験開始以来、1t当たり10人民元(約170円)から60人民元(約1,000円)で推移。平均価格は20人民元程度。現地の報道によると、一部の市場では、取締が緩いため、ルールを遵守していなかったり、数値を改竄することも行われているという。その結果、市場は断続的に運用され、一般的な「市場」としての存在にまでなれていない。

 それでも、中国の電力会社では、排出量を抑制するための複雑な市場取引が事業として組み込むところも出てきている。例えば、華潤電力(CRパワー)では、各発電所の月毎の炭素排出データや余剰・不足量をリアルタイムに把握できるシステムを構築し、異なる発電所間での内部バランシングも実施。企業グループ内での排出量の取引や、排出量を集中管理する「エスクロー」と呼ばれる制度も導入し、スワップやカーボン貸借のような金融モデルも誕生している。先物取引、ファンド組成、クォータ・プレッジ等の金融商品の開発も進められている。

 今回の全国排出量取引制度では、なず、石炭火力発電事業が対象となる。合計2,225の発電所に年間割当量が設定され、それを超えると不足分の購入義務、余剰分は販売の権利が得られる。2,225ヶ所の発電所の合計年間排出量が約40億t。2,225ヶ所の発電所のうち186ヶ所は、地域ごとの試験導入の市場対象となっていたが、その他90%以上の企業が初めて制度対象となる。

 対象となった発電所には、総量ではなく原単位での排出許可割当が付与される。ガス火力発電所は、制度の対象だが、初期時点では、不足した場合でも購入義務がなく、余剰分の排出量のみを販売する権利を得る。初期の段階では、金融機関や個人投資家は取引に参加できない。

 中国は今後、石油化学、化学、建材、非鉄金属、製紙、鉄鋼、発電、航空等、排出量の多い8つの産業を対象にすることを目指している、導入時期は未定。

 初日の取引価格は、1t当たり52.9人民元(約900円)。前日のEU排出量取引市場(EU-ETS)の61.92ユーロ(約8,100円)を大きく下回った。

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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