宮城県議会は7月5日、環境サービス世界大手仏ヴェオリアの水道事業子会社ヴェオリア・ジェネッツや水処理大手メタウォーター等8社で構成したコンソーシアム「メタウォーターグループ」に上下水道と工業用水の運営権を設定する議案を、本会議で賛成多数で可決した。2022年4月から事業開始予定。
宮城県は今回、「みやぎ型管理運営方式」と称したコンセッション方式を採用。同スキームでは、上工下水施設の所有権を宮城県が保有したまま、事業の運営権を民間に売却する。上工下水一体官民連携運営事業のコンセッション契約は、日本初。
宮城県は、人口減少や節水、老朽化した設備・管路の更新等で、今後水道料金の上昇が避けられないと分析。2014年から企業局内部で、水道事業の厳しい経営環境に対する危機感を共有してきた。
(出所)宮城県 水道経営課「宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)について」
また、宮城県では従来から、民間事業者への委託を行ってきたものの、最長4年から5年という契約期間や、事業ごと個別委託、仕様発注等では、民間の力を最大化できていないことを課題視。契約期間を20年間に設定し、対象も水道用水供給2事業、工業用水道3事業、流域下水道4事業の合計9事業一体での契約に、発注方式も受託者側での工夫が可能な性能発注に変更した。
(出所)宮城県 水道経営課「宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)について」
受託したメタウォーターグループは、10社で構成。出資比率は、メタウォーター34.5%、メタウォーターサービス0.5%、ヴェオリア・ジェネッツ34%、オリックス15%、日立製作所8%、日水コン3%、橋本店2%、復建技術コンサルタント1%、産電工業1%、東急建設1%。
優先交渉権者選定の応募時点では、前田建設工業、スエズウォーターサービス等9社のコンソーシアム「みやぎアクアイノベーション」や、JFEエンジニアリング、東北電力、三菱商事、日本政策投資銀行等8社のコンソーシアム「JFEエンジ・東北電力・三菱商事・明電舎・水ingAM・ウォーターエージェンシー・NJS・DBJグループ」等も提案。有識者等による宮城県民間資金等活用事業検討委員会が審査を行い、メタウォーターグループが最優秀提案者に選定された。
メタウォーターグループの提案では、上工下水一体化によるスケールメリットの実現や、薬品・資材の調達及び設備機器の選定の民間委託等により、20年間で現行体制比287億円のコスト削減が可能と推計。水道料金上昇の抑制を期待できるという。一方、宮城県は、水道法に基づく水質検査や、管路の維持管理、管路・建物の更新工事は、引き続き宮城県が担うため、完全に売却する民営化ではないと明言。水道水の安全性を強調した。
(出所)宮城県 水道経営課「宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)について」
今回採用されたメタウォーターグループの提案では、統合型広域監視制御システム導入がコスト削減施策の中核の一つ。同技術は、ヴェオリアが提供する。同社は2017年、静岡県浜松市での下水道コンセッションも実現しており、日本でのさらなる事業拡大を進める。
【参照ページ】宮城県上工下水一体官民連携運営事業(みやぎ型管理運営方式)について
【参照ページ】提出議案等 第379回県議会(令和3年6月定例会)
【参照ページ】Veolia speeds up the development of its water business in Japan by signing off the operation of Miyagi Water and WasteWater Concession Project
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