アサヒグループ飼料製造子会社アサヒバイオサイクルは7月7日、ビール生産の副生物「ビール酵母細胞壁」を肥料原料として活用した水稲栽培の食害低減の実証試験で、一定の効果が確認できたと発表した。同実証試験は2020年、JAぎふと共同実施し、ジャンボタニシを対象に実施した。
ジャンボタニシは、水稲等の水田作物を食害する外来種の貝。水稲の場合、田植え後2週間から3週間の生育初期の柔らかい苗が被害に遭いやすく、苗がほぼ無くなる事例も多く報告されているという。ジャンボタニシは、九州・四国・本州の太平洋側など温暖な地域に多く生息。近年、気候変動に伴う気温上昇でジャンボタニシの生息範囲が拡大傾向にあり、農業での深刻な問題となっている。
同社は、ビール製造工程での副産物「ビール酵母細胞壁」由来の肥料原料が持つ2つの特徴に着目した。まず同原料を植物に与えると、植物本来の免疫力を高め、根張りが向上。土壌中の鉄分を多く吸収することが可能。加えて、同原料を土壌に還元することで、有用菌優勢の微生物叢に変化させることができる。一方ジャンボタニシは、鉄への耐性が弱い事が明らかになっているため、その有用性に仮説を置いた。
同社は2020年6月、JAぎふと協働し、岐阜県瑞穂市の水田約5haに同原料を使用。同原料不使用の隣接水田で、約2割の稲がジャンボタニシの食害があったのに対し、同原料を使用した水田では、食害された稲はほぼ見られなかったという。2021年には、実証試験面積をJAぎふ管内巣南営農組合の合計12haに拡大予定。さらなる効果の検証を進める。
同肥料原料は、食品由来のため安全性が高く、植物の病気への耐性の強化、収穫量の増加、土壌の改善等での農作物の品質向上に寄与。化学肥料を使用しないため、収穫量あたりの二酸化炭素排出量削減も期待できる。
【参照ページ】水稲栽培に「ビール酵母細胞壁」由来の農業資材(肥料原料)を活用、“稲作の天敵”ジャンボタニシによる稲の食害が低減~食品由来の安全・安心な肥料原料で、農業の課題解決に貢献~
【画像】アサヒバイオサイクル
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら