米国務省人身取引監視対策部は7月1日、各国の人身売買防止への取り組みを評価した2021年版「人身取引報告書」を公表。ヒューマントラフィッキング行為に対する日本政府の取り締まりの甘さや、被害者保護の不足を指摘し、日本の評価は前回と同じくTier2のままだった。一方、韓国、台湾、シンガポール、フィリピンはTier1だった。
【参考】【国際】米国務省、2020年版人身取引報告書発表。日本は政府の対策不十分で格下げ(2020年6月29日)
米国務省は毎年、各国政府による人身売買を防止するための取り組みを評価している。その評価の基準となるのは、各国における人身売買問題の有無やその規模ではなく、各国政府の取り組みが米国連邦法である人身売買被害者保護法(TVPA)が定める最低基準を満たしているか否か。評価は下記の4段階で行われ、Tier 1が最高の評価となる。評価分析は米国大使館、政府関係者、国際機関やNGO、学術研究、ニュース記事、各国への出張調査、米国国務省に直接寄せられるメール等など、様々な関係者から集められた情報を基にしている。
- Tier1: 政府による人身売買防止の取り組みがTVPAの定める最低基準を満たしている
- Tier2: 政府による人身売買防止の取り組みがTVPAの定める最低基準を完全には満たせていないものの、TVPAの基準を満たすための努力がなされている
- Tier2ウォッチリスト: Tier 2の条件を満たすが、人身売買による被害が大きい、または人身売買を防止するための取り組み拡大を証明することができない
- Tier3: 政府による人身売買防止の取り組みがTVPAの定める最低基準を完全には満たせておらず、満たすための努力もなされていない
日本は、2018年に初めてTier1となり、2019年は維持できたが、2020年と2021年はTier 2。理由は、人身売買行為に対する処罰が罰金や執行猶予付の判決に留まっていて罰則が弱い点、企業での技能実習制度の悪用が続いていることに対し政府が実効性のある対策をとっていない点、司法機関が人身売買の被害者認定に消極的で司法アクセスが制限されている点の3つを挙げた。米国務省は、日本政府は改善に向けて動いていると言及しつつも不十分と判断した。
勧告事項としては、人身売買販売には罰金刑をなくし最大4年以上の懲役を課すこと、技能実習制度や特定技能ビザ等で働いている移民労働者の強制労働犠牲者を特定し保護するための省庁間手続を定めること、性的人身売買と強制労働の男性犠牲者の特定を強化すること等を求めた。
【参照ページ】2021 Trafficking in Persons Report
【参照ページ】2021 Trafficking in Persons Report: Japan
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