EUの欧州議会は6月9日、欧州委員会とEU加盟国に対し、海洋の生物多様性の喪失や、海洋生態系の劣化がないことを保証できるまで、深海底での資源採掘を停止(モラトリアム)することを求める決議を、賛成515、反対90、棄権86の賛成多数で採択した。欧州では生物多様性の観点から、深海底での資源採掘に「NO」を突きつける動きが広がっている。
深海底とは、国際海洋法条約が規定している概念で、排他的経済水域および大陸棚の外側に広がる公海の海底。今回の決議は、6月8日の世界海洋デーに合わせて行われたもの。EUで欧州委員会が2020年5月に採択した「2030年生物多様性戦略」の中で、「漁業や採掘活動を通じ海底を含む重要な生物生息地に対する悪影響を著しく削減する」という方向性を示しており、欧州議会の決議はこれに呼応したものとなっている。
【参考】【EU】欧州委、2030年生物多様性戦略を採択。2030年までに陸域・海域30%以上を保護区化(2020年5月21日)
今回の決議は、欧州委員会に対し、サーキュラーエコノミーの観点からも、海底資源開発への公的資金拠出を停止することも求めている。また、深海底開発の国際ルールも規定している国際海洋法条約に関し、「国際海底機構」の透明性を確保することも要求した。
深海底資源開発に関しては、BMW、グーグル、サムスンSDI、ボルボ・グループが3月、深海底資源採掘が深海の環境に与える影響に関する包括的な科学研究が完了するまで、深海底資源の活用及び深海底資源へのファイナンスを自主的に禁止するイニシアチブを発足。企業が自主的に禁止を進める動きも出てきた。国際NGOからも深海底資源開発は環境破壊につながるとの警告も出ている。
【参考】【国際】BMWとWWF、新海底資源の採掘禁止イニシアチブ発足。グーグル、サムスン等も参画(2021年5月1日)
【参考】【国際】環境NGO、深海底多金属鉱床採掘事業は生態系破壊と停止要請。南太平洋で開発計画進む中(2020年6月4日)
一方、日本政府は、閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針 2021」の中で、深海底でのメタンハイドレード、海底熱水鉱床、レアアースの資源開発政策を続行する方針を固めており、国際協調の面で新たな火種となってきている。
【参考】【日本】政府、経済財政運営と改革の基本方針2021を閣議決定。グリーン、デジタル、地方、少子化の4重点(2021年6月20日)
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