世界銀行は6月16日、気候変動と生物多様性の双方を対象とする機関投資家の集団的エンゲージメント・イニシアチブとして「Nature Action 100」を発足する構想を発表した。気候変動の分野では、機関投資家の気候変動アクション・イニシアチブClimate Action 100+があるが、Nature Action 100は、Climate Action 100+の欠点を補うものを目指す。
世界銀行の新たな試みは、2021年初頭にコロンビア大学国際公共問題大学院(SIPA)の11人の大学院生研究者が世界銀行と協力し、生物多様性の喪失に関する投資家エンゲージメントイニシアチブを対象とした「Nature 100」のモデルを作成したことに端を発する。大学院生のチームは、Climate Action 100+のケーススタディを行い、長所と短所を特定した。
【参考】【国際】Climate Action 100+、ターゲット企業が167社に増加。ステート・ストリート加盟で5400兆円に(2020年12月4日)
まず、Climate Action 100+は、情報開示と排出削減のベースラインを設定し、パリ協定の目標と整合性のあるトランジション戦略を企業に求めたことで、主要な投資家を惹きつけることに成功したと評価。しかし、企業のパフォーマンスを評価する指標の策定が2021年と2年間遅れたことを反省点としてみた。その結果、エンゲージメント先の多くの企業がパリ協定との不整合な目標を設定することになってしまったという。他にも、企業情報開示では、バリューチェーン上の気候変動と森林に関する物理的リスク、そして水に関する移行リスクは過小評価される傾向にあるという。
また、大学院生のチームは、Climate Action 100+は、PRI、IIGCC、Ceres、IGCC、AIGCCの5団体が運営しており、ガバナンス上非効率になっていることも課題として認識した。そして、最も排出量の多いアジア地域よりも、北米や欧州での活動が中心となりがちという課題も指摘した。
そのため世界銀行は今回、Nature Action 100では、これらの課題を踏まえた組織・活動設計が重要との考えも披露。具体的には、まず、イニシアチブの目標としては、短期的には生物多様性喪失ゼロ、長期的には生物多様性ポジティブ(ネットでプラスの影響)を掲げ、単一で普遍的な測定基準を策定することに集中。活動の優先事項としては、エンゲージメント、認知拡大と教育、報告と測定、法規制アドボカシーの4つに置いた。
また、ガバナンスでは、複数のパートナーが加わりながらも単一の組織が運営する。また、加盟機関としては、初期には活動を勢いづけるため幅広く門戸を開きながらも、徐々に加盟機関の意思レベルに応じて、複数の集団的エンゲージメントグループを用意すべきとした。
世界銀行は、Nature Action 100を、2021年10月に中国・昆明で開催される第15回国連生物多様性条約(CBD)締約国会議にも発足発表する考えもみせた。すでに、World Benchmark Alliance(WBA)、生物多様性のためのファイナンス協定(F4B)、Robecoが参画する意向の模様。
【参考】【国際】生物多様性のためのファイナンス協定、署名機関が18社追加。日本からも1社(2021年5月29日)
【参照ページ】Nature Action 100: A proposal for targeted investor engagement on biodiversity
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら