東芝は6月10日、2020年7月31日開催の臨時株主総会で、議決権集計の不備と、経済産業省関係者から一部外国人株主への圧力が取り沙汰されている問題に関し、3人の独立弁護士がまとめた調査報告書を公表した。特に、圧力問題では、経済産業省の商務情報政策局の局長や課長や、同省大臣官房の総括審議官が東芝と密に連携し、外国人株主の提案した議案を廃そうとした経緯が赤裸々に明かされ、コーポレートガバナンス上の大きな課題を突きつけた形となった。
【参考】【日本】東芝、取締役会側反対のガバナンス議案が株主の賛成対数で可決。株主アクティビズム(2021年3月21日)
同報告書によると、同社の筆頭株主でシンガポール投資ファンドのエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが提案した議案「株式会社の業務及び財産の状況を調査する者の選任の件」を賛成多数で可決されたが背景には、エフィッシモが、東芝が2015年から2019年までの間に孫会社の投資ITサービス(TSC)に24件もの架空・循環取引をしていたことに強い関心を示しており、独自の取締役選任要求。そのことに警戒感を感じた東芝側が、2020年5月8日に施行予定だった改正外為法を活用し、エフィッシモの動きを牽制するよう経済産業省に支援を要請していたという。
同報告書の中では、調査弁護士が関係者へのヒアリングを通じて把握した一連の動きが、事細かに書かれている。その様子からは、経済産業省の官僚から、外国人株主に対し圧力とも取れる動きがあったことが記されていた。一連の動きに関し、東芝の永山治社外取締役(取締役会議長)は6月14日に「コンプライアンスが欠如していた」とも語っている。
これらを受け、東芝は6月13日、6月25日に開催予定の株主総会で票決する役員選任候補から、太田順司社外取締役(監査委員会委員長、指名委員会委員)と山内卓社外取締役(指名委員会委員、監査委員会委員)を外し、任期満了での退任を決定。さらに執行役選任候補だったが豊原正恭代表執行役副社長と加茂正治執行役上席常務も候補から外し、任期満了で退任することを決定した。
日本経済新聞によると、議決権行使助言会社大手米グラスルイスは、今回の役員選任に関し、太田氏と山内氏以外にも、永山治社外取締役(取締役会議長、指名委員会委員長、報酬委員会委員)、小林伸行社外取締役(監査委員会委員)、ワイズマン広田綾子社外取締役(指名委員会委員)にも反対を推奨しているという。すでに、当時の車谷暢昭取締役代表執行役社長兼CEOは2021年4月に退任している。
一連の動きを巡って、梶山弘志経済産業相は6月15日、経済産業省が会社側に介入したことについては「東芝が担っている重要な事業、技術の安定的な発達をはかるため経産省の政策として当然のことを行った」として問題はなかったとの認識を示した。経済産業省として究明の独自調査等もしない。経済産業省の官僚による公務の守秘義務違反も報告書の中で指摘されたが、これについても梶山大臣は問題なしとの考えを示した。
【参照ページ】会社法第316条第2項に定める株式会社の業務及び財産の状況を調査する者による調査報告書受領のお知らせ
【参照ページ】調査報告書を受けた当社の対応等について
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